サイバー犯罪の現在と捜査取組み | リーテックス株式会社特別企画(河原淳平特別顧問インタビュー)【Part2】

リーテックス株式会社特別企画(河原淳平特別顧問インタビュー)
Part02サイバー犯罪の現在と捜査取組み
近年、増加傾向にあるキャッシュレス決済を狙った犯罪。いまやほとんどの人が使っていると言っても過言ではないインターネットバンキングでは、利用者のIDやパスワードが狙われ、不正送金という犯罪に巻き込まれる危険性が高まっている。また、SNSを介したなりすまし被害も急増している。もはや他人事ではない身近な犯罪について、警察庁で初代サイバー警察局長を務めた河原淳平氏が対策と共に解説する。
ランサムウェア以外に増加している犯罪
橘:ランサムウェア以外には、どのような犯罪が増加していますか?
河原:増加傾向にあるのは、一般的に言うとキャッシュレス決済に関する犯罪の被害です。まず、インターネットバンキングの不正送金という犯罪。利用者のIDやパスワード等の識別情報を盗み出して、それを使ってインターネットバンキングを操作し、手元にある口座などに預金を移す、こういった手口が一般的です。
橘:インターネットバンキングは、私も使ってます。ワンタイムパスワードを使っても狙われるのでしょうか?
河原:ワンタイムパスワードを使っても、それを突破する手口が数年前から出ています。金融機関でもいろいろと対策を講じて、被害が減るような構図にはなっていますが、どんどん新しい手口が出ているということですね。
被害額は過去最悪に
橘:インターネットバンキングの被害額は?
河原:昨年の被害件数を見てみると5578件、それから被害額が約87億3,000万円。いずれも過去最悪の数字になっていますが、その背景はフィッシングです。偽サイトを立ち上げ、メールやショートメッセージを使って、そこにいろんなストーリーを作り、偽サイトにアクセスさせる。そこでIDやパスワード、時にはワンタイムパスワードまで盗んでしまう。リアルタイムでなりすましの不正送金を行う手口になります。フィッシングサイトは、クレジットカード事業者やエレクトロニックコマースなど、電子商取引の事業者を装ったものが多くを占めています。キャッシュレス決済に関する犯罪ですが、クレジットカードの不正利用という被害も増加していて、日本クレジットカード協会の調査によると、昨年の被害額が約504億7,000万です。1990年から統計を取り始めているそうですが、これも最悪の数字だということです。この背景は、フィッシングによってクレジット情報を盗み取るというもの。

また、WEBスキミングという手口は先ほど申し上げたとおり、正規サイトに似せた偽サイトを立ち上げるものです。これに攻撃者が不正侵入し、決済画面を改ざんすることで、決済に関する情報が読み込まれるというもの。このような手口で情報を盗むのです。
有名人もなりすましの被害に
橘:誰でも被害者になる可能性がありますね。
河原:そうですね。それから、なりすましの被害に遭ったという方も多くいるのではないかと思います。

橘:有名人の方々も挙げていらっしゃいますよね。
河原:有名人になりすました偽の広告を掲載し、投資を勧誘する。その上で金銭を騙し取るようなSNS型投資詐欺、またSNS上でやり取りして、その中で恋愛感情を抱かせることで最終的に金銭を騙し取るSNS型のロマンス詐欺という被害も多発しています。警察庁の発表によると、昨年2つの犯罪類型の被害総額が約455億円にのぼっています。今年の1月から6月までの半年間で、被害総額が約660億円にのぼるという、まさに非常に深刻な状況と言えます。
キャッシュレス社会で、安心安全にサービスを利用するためには
橘:どのような対策が取られていますか?
河原:キャッシュレス社会の中で、安心安全にサービスを利用するためには、警察による捜査など取り締まりも非常に重要ですが、被害を未然に防止して仮に被害にあっても拡大を防止していく、このようなアプローチが非常に重要になると思います。また、SNS型投資詐欺やSNS型のロマンス詐欺については、海外の犯罪グループの関与がうかがわれ、匿名流動型犯罪グループという犯罪集団が関与している可能性もあります。

橘:匿名流動型犯罪グループとは?
河原:匿名流動型犯罪グループとは、互いの素性を知らずにSNSで連絡を取り合うなど、非常に匿名性が高く、結びつきも緩やかで、離合集散を繰り返していく。従来の犯罪組織とは大きく異なる特徴を持つ犯罪集団を総称したものです。
警察は組織犯罪対策部門が中心となり、このような犯罪グループの関与も常に視野に入れ、実態解明に向けて努力しています。特殊詐欺連合捜査班特別の捜査組織というのもあり、捜査と抑止の両面から策を推進しているところです。
橘:警察捜査とテクノロジーは、切っても切り離せないものですね。
河原:サイバー犯罪はもちろん、それ以外の様々な犯罪の捜査において、デジタルやITの素養が求められる時代になったと感じます。
最新の記事
NaN.aN.aN
お役立ちブログ
「デジタル証明研究会」の発足について | リーテックス株式会社特別企画(池田眞朗顧問、小倉隆志社長 対談)【Part5】
NaN.aN.aN
お役立ちブログ
ビジネス法務学と生成AI | リーテックス株式会社特別企画(池田眞朗顧問、小倉隆志社長 対談)【Part4】
NaN.aN.aN
お役立ちブログ
ビジネス法務学のルール創りと国際標準 | リーテックス株式会社特別企画(池田眞朗顧問、小倉隆志社長 対談)【Part3】
NaN.aN.aN
お役立ちブログ
民法債権関係改正と行動立法学 | リーテックス株式会社特別企画(池田眞朗顧問、小倉隆志社長 対談)【Part2】
リーテックスのサービスについて
資料ダウンロード