電子契約に関する政府見解

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    2020年9月4日に発表された総務省、法務省、経済産業省から出された電子契約に関するQ&Aについて

    電子契約サービスを選択する際のポイント「本人確認・身元確認の重要性」について、総務省担当官に内容を確認しました。

    その内容を元に、電子契約に関する政府見解を解説していきます。

    2020年9月4日の電子契約に関するQ&Aの概要

    2020年9月4日に発表された電子契約に関するQ&Aでは、いわゆる代理人方式電子署名(サービス提供事業者が利用者の指示を受けてサービス提供事業者自身の署名鍵による暗号化等を行う電子契約サービス)において、電子署名法第3条との関係で、事業者の電子署名を本人による電子署名とするための技術的要件が示されました。

    本人確認として、2要素認証の必要性などが挙げられています。

    この政府見解により、代理人方式電子署名であっても、3条の推定効が働く可能性が出てきたため、電子契約サービスの可能性がますます広がったと言えます。

    しかし、最も重要なのは7月17日付のQ&Aの問3に引き続き9月4日付のQ&Aでも問4として挙げられた「電子契約サービスを選択する際の留意点は何か」ではないでしょうか。

    問4

    Q.電子契約サービスを選択する際の留意点は何か。

    A.実際の裁判において電子署名法第3条の推定効が認められるためには、電子文書の作成名義人の意思に基づき電子署名が行われていることが必要であるため、電子契約サービスの利用者と電子文書の作成名義人の同一性が確認される(いわゆる利用者の身元確認がなされる)ことが重要な要素になると考えられる。この点に関し、電子契約サービスにおける利用者の身元確認の有無、水準及び方法やなりすまし等の防御レベルは様々であることから、各サービスの利用に当たっては、当該各サービスを利用して締結する契約等の重要性の程度や金額といった性質や、利用者間で必要とする身元確認レベルに応じて、適切なサービスを慎重に選択することが適当と考えられる。

    ここで技術的要件以前の問題として、改めて本人確認、身元確認の重要性が示されました。特に、身元確認については「有無」という強い表現で、全く確認を行っていない事業者があることへの注意喚起を行っています。

    技術の進歩によって今後もセキュリティ面で様々な進歩があるでしょう。しかし、電子署名に関しては大前提として「身元確認」が重要な要素であることを指摘しています。

    政府見解で電子契約の本人確認、身元確認の重要性に言及する理由

    契約は民法の契約自由の原則のもと、一部の規制されている契約(書面又は電磁的記録によることが義務付けられている保証契約など)を除き、当事者間で合意されていれば、口頭合意を含めてどのような手段でも契約は締結できます。

    民法521条 契約の締結および内容の自由

     1. 何人も、法令に特別の定めがある場合を除き、

     契約をするかどうかを自由に決定することができる

    従って、電子契約でも契約の締結は可能ですが、問題は当事者間で紛争になったときに、電子契約が裁判で証拠として通用するかどうかがポイントになります。

    これは、訴訟手続きを定めた民事訴訟法をベースに裁判所で判断される問題です。

    「ところで「契約」と「契約書」の違いはご存知でしょうか。

    「契約」は当事者間の合意、「契約書」は契約の内容を表示する文書で証拠となるものと定義されています。そして、「契約書の要件」には下記2点があり、これを満たしているとき契約書として「形式的証拠力」があると言えます。

    • ・真正に成立した契約書(当事者の意思確認)
    • ・契約書の原本性の確保(改ざん防止)

    この要件を踏まえて改めて注意喚起したのが、2020年9月4日の電子契約に関するQ&Aなのです。

    さて、電子署名法の第3条では、以下のように定められています。

    電子署名法第3条

    電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(公務員が職務上作成したものを除く。)は、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る。)が行われているときは、真正に成立したものと推定する。

    このように、電子契約が証拠となるための「真正に成立したものと推定」されるためには、「本人による電子署名」が必要です。「本人による電子署名」がある時、電子契約が真正に成立したものと推定され、これを推定効と言います。

    推定効が働くと、裁判所がこの契約書は本物だと認めてくれる(推定)ことになり、電子契約書を証拠として使えるようになります。電子契約が証拠となるための「真正に成立したものと推定」されるためには、当然「本人による電子署名」が必要です。

    契約の締結は取引にとって重要な要素であり、締結方法が手軽だから良いというわけにはいきません。コストをかけて電子契約サービスを導入しても、万が一の備えができていなければ、将来的に不安を残してしまいます。

    その点でもリーテックスデジタル契約は、電子債権記録機関(国の指定機関)であるTranzax電子債権株式会社への利用者登録を実施し、金融機関と同レベルの厳重な本人確認を行っています。さらにタイムスタンプおよび、特定認証機関の電子署名を付与することで第三者による契約書の改ざんを防止します。

    ネガティブな想像はしたくありませんが…。

    仮に、いつか裁判に発展するような事態に巻き込まれたとしたら…?絶対にないとは言い切れないシチュエーションに対しても万全の体制を整えておくのは、企業として大切なことだと認識したいものです。

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