広がりを見せる電子契約の現状と課題

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    紙の契約書から電子契約へ

    契約のやり方は原則自由で、口約束でも成立します。しかし、これまで企業間の契約では一般的に紙の契約書を作り、契約者が互いに保管する方法を用いてきました。

    紙の契約書が多く使われてきた大きな理由として、信頼性の高さが挙げられます。紙の契約書には契約をした人の署名押印があるため「誰が作ったのか、どんな印鑑が使われたのか」といった大切な情報が契約書と一体化して保存されることから、重宝されてきました。

    しかし、一方で紙の契約書には、契約締結に至るまでに印刷・製本・捺印・封入・郵送・・・などの煩雑な業務が伴うだけでなく、印紙税や保管コストなど金銭的な負担も生じることから契約のペーパーレス化、すなわち「電子契約」が注目されています。

    電子契約を取りまく状況と課題

    特に、2020年以降は新型コロナウイルス感染症拡大に伴うテレワークの普及、さらには内閣府規制改革推進会議が進める押印廃止の動きを受けて、電子契約の導入を本格的に検討し始めた企業が大幅に増加しています。

    在宅勤務に対応できることは当然のことながら、紙の契約書と同等の法的担保があること、すなわち裁判で証拠として利用できることがサービス選定の際に重視されています。

    こうした中で多くの事業者が提供しているのが、サービス事業者が電子署名を行う「事業者型」と呼ばれる電子契約です。これは、サービス利用者同士の合意成立を当事者ではなく第三者である事業者の電子署名によって裏付ける方式です。

    しかし、現行法の規定が想定する電子契約は、いわゆる「当事者型」と呼ばれるもので、契約当事者が認証局から電子証明書を各々取得し、自分の名義で電子署名を行うことが求められていました。これにより契約当事者本人が特定され、紙の契約書と同等の法的担保が可能でした。事業者型の電子契約は、当事者型に比べると簡便で導入がし易いという利点がありますが、現行法上の位置づけが不明確で法的な懸念が残ることから導入を躊躇する一因にもなっていたのです。

    電子契約の方式による違いのまとめ

    法的懸念の解消へ大きな一歩

    2020年9月4日、総務省・法務省・経産省の3省が連名で「利用者の指示に基づきサービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化等を行う電子契約サービスに関するQ&A(以下、電子署名法第3条Q&A)」を公表しました。

    これにより技術的要件のほか、十分な身元確認の措置が行われている場合は事業者型の電子契約サービスについても電子署名法3条の担保があることが主務官庁から示されました。

    つまり、法的な位置付けが不明確であった事業者型の電子契約も要件を満たせば、紙の契約書と同様に裁判で証拠として使えることが示されたのです。これにより、事業者型の電子契約サービスに対する法的懸念が減り、民間の利用が拡大すると予想されます。

    さらに注目したいのは「本人確認」の重要性が示されたことです。

    現状普及している事業者型の電子契約サービスでは、これを疎かにしているものも散見されます。そもそも、なぜ「本人確認」が重要なのでしょうか? また、これを疎かにするとどのようなリスクがあるのでしょうか?

    本人確認をしない電子契約の法的リスク

    本人確認が疎かな電子契約を利用した場合、第三者によるなりすまし契約が締結されてしまい、これに巻き込まれると下記のようなリスクを負うことになります。

    原則として、無権限の第三者(詐欺師など)によって行われたなりすまし契約は、なりすましの被害者(なりすまされた者)には何ら法的な効果は帰属しません。

    しかし、これでは当該契約を信頼した契約相手(だまされた者)が黙っていないでしょう。相手方からは、民法における表見代理の規定(民法109~112条)によって請求される可能性が十分に考えられます。これが認められた場合、被害者とはいえ当該契約から生じる権利義務関係に拘束されることになります。

    表見代理が認められなかった場合、契約相手(だまされた者)は、なりすましをした第三者に対して損害賠償請求を行うことができます(民法117条)。しかし、なりすましを行なった詐欺師らは、すでに姿をくらましていることでしょう。損害賠償の請求は事実上不可能になり、だまされた者が泣き寝入りせざるを得ない…そんな事態に見舞われます。

    では、この電子契約サービスを提供した電子契約事業者について、何らかの責任を取らせることはできないのでしょうか?

    事業者の利用規約を見ると、なりすまし契約の場合に関する免責条項を置いていることが多々あります。つまり契約相手が本人なのかどうか、契約権限があるのかどうかは、利用者が確認すべきことであり、事業者は責任を負わないことになっているのです。

    このように、本人確認が疎かな電子契約を使った結果、なりすまし契約のトラブルに巻き込まれ、だまされた者が泣き寝入りしたり、なりすまし被害者が身に覚えのない契約に拘束されたりするおそれがあること、さらにリスキーなシステムを提供した事業者には責任追及ができないケースがあることを認識しなければなりません。

    本人確認にこだわるリーテックスデジタル契約

    ここまで解説したように、電子契約選びには「紙の契約書と同等の法的担保があるかどうか」が非常に重要です。つまり「本人確認がきちんとなされているか」が重要な選定ポイントとなります。これらは、電子契約選定の中で見落とされてきた点です。

    リーテックス株式会社が提供するデジタル契約では、サービス開始時からこの点を重視。金融機関と同等の本人確認を行うことでトラブルや法的リスクに巻き込まれないよう安心してご利用いただけるサービスを提供してまいりました。

    当社は、金融庁指定機関であるTranzax電子債権株式会社と提携し、本人確認がしっかりと行われたということを電子記録債権(電子手形)によって証明しています。

    万が一、裁判に発展した場合でも証拠として利用することができます。

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