電子化できる契約書類、できない契約書類

一部の契約については、法令で契約書を書面で作成することが義務付けられているものがあり、電子契約サービスの導入・検討にあたって注意が必要です。この記事では電子化できる契約書類とできない契約書類について解説します。

電子化できる契約書類の一例

今までは紙の書面で契約していたものを電子化することについて法律的に問題がないのか疑問に思う方もいるかと思います。

実際には、多くの契約類型においては、契約書は必須でなく、よく言われる「口約束も契約のうち」に従って、口頭でも成立します(詳しくは、別記事「契約と契約書〜電子契約を選ぶ際のポイント」をご覧ください)。

しかし、口頭で契約した場合、後になって「本当にその契約をしたのか」、「契約をしたとしてもその内容がどのようなものだったのか」を証明することが困難なケースが出てきます。そこで、通常は押印した紙の契約書を作成することで、訴訟等のいざという時に使える証拠としています。

一般の契約では、このように契約書は証拠とすることが目的ですので、紙の契約書でなく証拠力のある電子契約でも問題がないことになります。しかし一方で、契約書の交付・保存が法律で義務付けられているものがあり、契約の電子化は一律ではありません。

電子化できる契約書類の一例が下記です。

  • 取引基本契約書
  • 業務委託契約書
  • 秘密保持契約書
  • 代理店契約書
  • 下請法3条書面
  • 業務請負契約書
  • 注文書・注文請書
  • 工事請負契約書
  • 委任契約書・準委任契約書
  • 雇用契約書
  • 保証契約書

この中に記載があるように「契約書」という名前の文面ではない、例えば、発注者が注文書を受注者に送り、受注者が請書を出す場合の「注文書・注文請書」のやりとりも電子化することができます。その他にも検収書や請求書など、様々な帳票類も電子化することが電子帳簿保存法などで認められています。

保証契約書は電子化できるのか

保証契約は、(一般的に)金銭の消費貸借契約の貸主等と保証人の間に成立する契約ですが、「書面」で行う必要がある契約の典型例の一つです。これは、保証人の意思確認が問題になる事例が多発したことから、2004年の民法改正の際に、保証契約は書面でしなければ効力を生じないとされたためです(民法446条2項)。そして、このように「書面」性が要求される契約は、特別の規定がなければ電子化できないことになりますが、保証契約に関しては、上記改正の際に、電子文書(法律には「電磁的記録」と記載)によって契約された場合には書面で契約されたものとみなすという規定(民法446条3項)が設けられています。したがって結論としては、保証契約書は電子化することが可能です。

電子化できない契約書類の一例

一方で、契約の中には、口頭では成立せず、紙の契約書の作成が義務付けられている契約が存在します。また、業法等において、契約書や、契約書そのものではないものの、契約条件を記載した紙の書面等の作成が義務付けられているものも存在します。これらは現状では電子化できない契約書類と言えます。法令上で「書面」という文言があり、紙での作成が指定されているかどうかが一つのポイントになります。

電子化できない契約書類の一例が下記です。

  • 任意後見契約書(任意後見契約に関する法律3条)
  • 訪問販売等で交付する書面(特定商取引に関する法律4条)

現在では、社会のデジタル化が進み書面を要求する法令の規定が電子取引の阻害要因になっていることが指摘され、法令がどんどん改正されています。

IT書面一括法(正式名称は「書面の交付等に関する情報通信の技術の利用のための関係法律の整備に関する法律」)により、民間同士の書面の交付や書面での手続きを義務づけている法令が一括して改正され、電子的手段でも手続きが可能になるものが増えました。

ただし、IT書面一括法でも類型的に電子化が適切でないものについては、電子化の対象外とされており、それらが上記の一例にある契約書類です。電子化が適切でないとされている理由の分類には下記があります。

  • 公正証書を要求しているもの(公正証書は公証人の面前で作成されなければならない)
  • 取引が対面で行われる等、電子での取引が行われないもの(質屋営業法等)
  • 国際条約に基づくもの(国際海上物品運送法等)
  • 契約を巡るトラブルが多発している等、書面での署名や押印の代替が困難なもの(貸金業法、商品先物取引法等)

しかし、これらに該当する契約類型に関しても政府の規制改革推進会議による「規制改革推進に関する答申(令和2年7月2日)」において、民間事業者間における手続きについて、特に不動産関係、金融関係、会社法関係において書面の電子化や押印の不要化、対面規制の見直しを進めるものとされています。

その中で具体的に、「不動産売買における重要事項説明書等の電磁的方法による交付等に向けて宅建業法の関連規定について改正措置を講じる」とあったところ、いわゆるデジタル改革関連法によって、不動産取引関係の契約書が電子化できるようになりました。

2022年5月より新たに電子化できるようになった不動産取引関係の契約書類

  • 定期借地契約書・定期借家契約書(借地借家法22条2項、38条2項)
  • 定期建物賃貸借契約の説明書面(いわゆる38条書面)(借地借家法38条4項)
  • 宅建業者の媒介契約書(宅地建物取引業法34条の2第11項)
  • 不動産売買における重要事項証明書(宅地建物取引業法35条8項)
  • マンション管理等の委託契約書(マンション管理法73条3項)

ここまで解説してきたように契約の他にも公的機関への申請書類・保存が必要な書類等で紙の書面が必須のものは多くあります。しかし、その多くはe-文書法(「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律」及び「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」の総称)などにより、電子化が可能となっており、今後電子化できる契約書類は増えていくことが予想されます。

その一方で、現時点では電子化が可能になっていない文書もあるので、各業界の業法等に基づき必要となる文書については電子化が可能かどうかを個別に確認する必要があります。

リーテックスでは、シンプルプラン以上のお客さまへのサービスの一環として、契約書の電子化が法令上問題ないかどうかお答えしていますので、お問い合わせください。

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