今さら聞けない電子契約Vol.4 「印紙税は、本当に要らないのでしょうか?」

広がりをみせる電子契約。文書で取り交わす契約とは手続きを含め異なる部分も多い。シリーズ「今さら聞けない電子契約」のVol.4では、印紙税について解説する。

印紙税とは
電子契約を導入する際の最大の経済メリットは印紙税がいらないこととされています。印紙税は本当に要らないのでしょうか。印紙税は、印紙税法で定められた課税文書を作成した場合に課税されます。課税文書とは 国税庁の説明によると、下記の通りです。

(1)印紙税法別表第1(課税物件表)に掲げられている20種類の文書により証されるべき事項(課税事項)が記載されていること。
(2)当事者の間において課税事項を証明する目的で作成された文書であること。
(3)印紙税法第5条(非課税文書)の規定により印紙税を課税しないこととされている非課税文書でないこと。
(国税庁ホームページ No.7100 課税文書に該当するかどうかの判断)より

代表的な課税文書は下記の通りですが、詳細は国税庁ホームページの印紙税で確認してください。

第1号文書 不動産などの譲渡、地上権などの設定、消費貸借に関する契約、運送に関する契約書
具体的には、不動産売買契約書、不動産交換契約書、不動産売渡証書、土地賃貸借契約書、土地賃料変更契約書、金銭借用証書、金銭消費貸借契約書、運送契約書など

第2号文書 請負に関する契約書
具体的には、工事請負契約書、工事注文請書、物品加工注文請書、広告契約書、映画俳優専属契約書、請負金額変更契約書など

第7号文書 継続的取引の基本となる契約書
具体的には、売買取引基本契約書、特約店契約書、代理店契約書、業務委託契約書、銀行取引約定書など

第17号文書 売上代金に係る金銭または有価証券の受取書、売上代金以外の金銭または有価証券の受取書
具体的には、商品販売代金の受取書、借入金の受取書、保険金の受取書など

電磁的記録は非課税
印紙税を必要とするものは、多岐にわたります。ただし、いずれも文書であることが条件です。税法上では、電子契約などの電磁的記録は文書ではありませんので、課税されないのです。実際、福岡国税局が下記のように回答した事例があります。

印紙税法に規定する課税文書の「作成」とは、印紙税法基本通達第44条により「単なる課税文書の調製行為をいうのでなく、課税文書となるべき用紙等に課税事項を記載し、これを当該文書の目的に従って行使することをいう」ものとされ、課税文書の「作成の時」とは、相手方に交付する目的で作成される課税文書については、当該交付の時であるとされている。

上記規定に鑑みれば、本注文請書は、申込みに対する応諾文書であり、契約の成立を証するために作成されるものである。しかしながら、注文請書の調製行為を行ったとしても、注文請書の現物の交付がなされない以上、たとえ注文請書を電磁的記録に変換した媒体を電子メールで送信したとしても、ファクシミリ通信により送信したものと同様に、課税文書を作成したことにはならないから、印紙税の課税原因は発生しないものと考える。

福岡国税局文書回答事例より

印紙税は文書に対するものであり、電磁的記録に対するものではないので、現在のところ、電子契約や電子領収書であれば印紙税は課税されません。しかし、税の公平性の観点から、電磁的記録に対しても課税すべきではないかという指摘もありますので、将来にわたって絶対課税されないとは言い切れません。

社会の電子化に関する法制度、規制の最近の変化は大きいので、特に税制の変更については注意しておく必要があります。

 

 

※この記事は2023年5月22日に、ニッキンONLINEにリーテックスが寄稿したものです。

記事はこちら※ニッキンONLINE(有料会員)のみ

ニッキンONLINEプレミアムはこちら

わかりやすい資料請求 IT導入補助金を相談
IT導入補助金を相談
わかりやすい資料請求

©2022 リーテックス株式会社 〜もっと、頼れる電子契約へ〜