なぜ、電子契約で収入印紙は不要になるのか?

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    「電子契約を使うと収入印紙が不要になる。」
    「電子契約は印紙税の節税につながる。」

    これは電子契約サービス導入のメリットとして挙げられるポイントです。同じ契約にも関わらず、なぜ電子契約の場合は収入印紙が不要になるのか、この点について国税庁の見解や国会での答弁の内容を元に解説します。

    印紙税に関する国税庁の見解

    国税庁のHPに印紙税について、以下のような見解が記載されています(平成31年4月1日現在)

    (1)印紙税法別表第1(課税物件表)に掲げられている20種類の文書により証されるべき事項(課税事項)が記載されていること

    (2)当事者の間において課税事項を証明する目的で作成された文書であること

    (3)印紙税法第5条(非課税文書)の規定により印紙税を課税しないこととされている非課税文書でないこと

    https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7100.htm

    このように国税庁の見解では、電子契約に関する文書は印紙税が非課税と明確には書かれていません。

    しかし、国税庁のホームページにある「請負契約に係る注文請書を電磁的記録に変換して電子メールで送信した場合の印紙税の課税関係について(別紙1-3)」では、紙の契約書では課税される注文請書を電子ファイルでメールを使って契約した場合の法解釈が記されています。

    注文請書の調製行為を行ったとしても、注文請書の現物の交付がなされない以上、たとえ注文請書を電磁的記録に変換した媒体を電子メールで送信したとしても、ファクシミリ通信により送信したものと同様に、課税文書を作成したことにはならないから、印紙税の課税原因は発生しないものと考える

    ただし、電子メールで送信した後に本注文請書の現物を別途持参するなどの方法により相手方に交付した場合には、課税文書の作成に該当し、現物の注文請書に印紙税が課されるものと考える

    https://www.nta.go.jp/about/organization/fukuoka/bunshokaito/inshi_sonota/081024/02.htm#a03

    国税庁の見解は「当事者の間において課税事項を証明する目的で作成された文書であること」であり、文書の作成が課税の理由になっています。

    電子メールに添付したPDFファイルやFAXによる契約書等の取り交わしは「文書を作成したこと」にあたらないため、印紙税は非課税です。

    電子契約においても電子ファイルで契約を交わすため、文書を作成したことにならず、印紙税は非課税となります。

    電子契約と印紙税に関する国会答弁

    参議院のHPにある「質問主意書」(平成十七年三月十五日、第162回国会、答弁書第九号)には、印紙税に関連した答弁が下記の通り記載されています。

    専ら文書により作成されてきたものが電磁的記録により作成されるいわゆるペーパーレス化が進展しつつあるが、文書課税である印紙税においては、電磁的記録により作成されたものについて課税されないこととなる

    https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/162/touh/t162009.htm

    内閣総理大臣の名義で書かれているこの答弁書では上記の通りで、現行法では「電子ファイルによる契約文書には課税されない」とされています。

    これらの理由から、電子契約には収入印紙は不要となります。

    なお、今後法制度の変更により何かしらの課税が行われるのではないかと不安に思う方もいるでしょう。

    確かにその可能性はゼロではありませんが、世界的に見ても印紙税のような税政は世界的にも珍しく、また電子取引に課税をしている国も非常に限られることから、税制度の変更によって電子契約が課税対象となる可能性は「低い」と考えられます。

    一般的な企業間の取引では、1契約書あたり4000円程度の収入印紙を貼付することが多く、建設業界等の高額な取引の場合は印紙代も高額になります。

    電子契約を導入することで、このような印紙代が節約できるだけではなく、郵便料金や印刷費・契約書の保管費用も削減することができます。

    補足情報:印紙税法上の契約書に収入印紙を貼ることによる納税の義務について

    契約書に収入印紙を貼ることによる納税の義務については、印紙税法の第2条、第3条に定められています。

    第二条 別表第一の課税物件の欄に掲げる文書には、この法律により、印紙税を課する。

    第三条 別表第一の課税物件の欄に掲げる文書のうち、第五条の規定により印紙税を課さないものとされる文書以外の文書(以下「課税文書」という。)の作成者は、その作成した課税文書につき、印紙税を納める義務がある。

    また、国税庁のホームページには課税対象となる文書の種類と印紙税額の一覧表がまとめられています。

    参考:国税庁 印紙税額一覧表(令和6年6月現在)

    国税庁による印紙税額一覧表を見ると、企業が恒常的に取り交わす文書が印紙税の納税対象であることがわかります。 ※印紙税額一覧表

    • 第2号文書 請負に関する契約書
    • 第7号文書 継続的取引の基本となる契約書(売買取引基本契約書、業務委託契約書など)

    この一覧表には印紙税額も記載されているため、取り交わす契約書の類型・数を確認すると総額でいくらの印紙税が発生しているのか確認できます。

    例えば、月に新規で30件の売買取引基本契約書を締結する会社は、4,000円×30件=120,000円の印紙税が発生します。

    しかし、この会社が電子契約を導入すると、印紙税がかからないことから月に120,000円のコスト削減につながります。年間で考えると1,440,000円となり、かなり大きな削減ですね。

    ぜひ、会社のコスト削減のために参考にしていただけたら幸いです。

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