今さら聞けない電子契約Vol.3「電子署名を目で見たことがないのですが、どんなものですか?」

シリーズ「今さら聞けない電子契約」。前回は契約と契約書の違いについて説明した。今回は、電子契約を行う上で不可欠な電子署名について解説する。



電子署名とは
電子契約のほとんどは契約のファイル(PDFファイル)に電子署名とタイムスタンプを入れたものです。電子署名あっての電子契約と言っても過言ではないと思います。電子署名の技術が無ければ、そもそも電子契約はできなかったでしょう。

Vol.2  契約のやり方に規則はありますか?」で説明しましたが、民事訴訟法第二百二十八条4項に「私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する」と定められていますので、電子契約が形式的証拠力を持つには、電子署名は必須の条件です。

さて、電子契約を語る上で最重要の電子署名ですが、どんなものかご存知でしょうか?法律上は電子署名法(正式名称は「電子署名及び認証業務に関する法律」)が、早くも2000年に定められました。これによる電子署名の定義は次の通りです。



前回説明した形式的証拠力に必要な次の2点がまさにこの法律でも必要と定められています。

①契約者本人による作成が確認できること
②改ざんされていないことが確認できること

ただし、一般的な技術的要件は定められていません。主務大臣の認定を受ける「特定認証業務」については技術的要件が省令で定められていますが、電子署名そのものは上記の2点が確保されていれば、いろいろな技術で作ることが可能です。



電子署名は目に見えない
ところで、電子署名をわかりにくくさせているのは、電子署名法で「電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう」と記載されている通り、印鑑や署名のようには、目に見えないことです。したがって、今回のタイトルの「電子署名を目で見たことが無いのですが、どんなものですか?」はまさにその通りで、電子署名は目に見えません。電子契約サービスで電子署名として印字されているケースがあるのは、電子署名そのものではなく、電子署名をしたということを示すマークなのです。

さて、現在の多くの電子署名のスキームは、対象ファイルをデータ接続している電子署名の認証局で特定して、このファイルを作成した者の名前を認証局が証明するというものです。

現在の日本で使われている電子署名は、ファイルの特定方法としてファイルの圧縮値(ハッシュ値)を計算して、登録されている圧縮値と同じなら、もとのファイルだと認定するものです。したがって、ネットに接続されていることが電子署名利用のインフラの条件となります。ただ、使いにくい大きな要因は、電子署名のデータの付与がPDFファイルの管理データの一種だとういうことです。電子署名の存在を一般に確認する方法としては、Adobe社の提供するAcrobat Readerの署名パネルしかないということです。

皆さんが、PDFファイルを開くのによく使われるEdgeやChromeでは、そのままでは電子署名を確認できません。Adobe社の提供するツールのインストールが必要です。このあたりが、一番わかりにくく、また使いにくいところです。現在の電子署名の技術の大半は30年以上前のものです。

法律上は許されているのですから、もっと使いやすい新しい電子署名の開発が期待されます。

 

 

※この記事は2023年4月23日に、ニッキンONLINEにリーテックスが寄稿したものです。

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