今さら聞けない電子契約Vol.1 「電子契約って何だろう?」

リモートワークの普及で一気に広がった電子契約。今後の社会のデジタル化の進展を考えると、決して逆戻りはしそうにない。しかし、そもそも分かりにくい「契約」を「電子」で行うのは躊躇しがち。シリーズ「今さら聞けない電子契約」では、武蔵野大学法学部客員教授で、地域金融機関と電子契約サービスで連携するリーテックス社長の小倉隆志氏が、こうした悩みに応え、初歩からわかりやすく解説する。

便利な電子契約
最近 契約を締結するときに、相手から 電子契約でお願いしますと言われることが多くなってきてませんか? 以前は 紙の契約書に印鑑を押し、印紙を貼って、契約書を作ってましたね。さらに、返信用封筒を付けて、場合によっては書留で郵送していました。

電子契約は、パソコンの画面で電子署名のボタンをクリックすれば、それで契約締結完了という流れが ほとんどです。以前と比べると、本当に便利になりました。 お金がかかる印紙がいらなくなったので、 郵便局に印紙を買いに行くことや、金庫に印紙を保管する手間もなくなりました。なんといっても、これまで郵便のやり取りで1週間はかかっていた契約締結が、あっという間に完了できるようになり、すごく便利です。でも、契約はとても大事なことです。以前は必要だった印鑑、印紙がなくて、本当に大丈夫なんでしょうか。誰でも疑問に思います。

契約締結方式に法律上の一般的な規制は無い
日本の法律では、契約に関する原則を民法で定めています。この民法522条2項では次のように定められています。「契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない」。簡単に言うと、契約の締結に印鑑や署名が必ず必要なことではないということです。

日本では、口約束でも契約はできるのです。電話発注でも、発注は成立します。契約締結はどんなやり方でも良いのに、なぜこれまで印鑑や署名などを行なってきたのでしょうか。契約書の大事な機能は、実は契約に合意した内容の確認と保存です。複雑な契約内容を口約束というわけにはいかないですね。お互いに証拠として保存しておくものが契約書です。ですから、契約書の末尾には、よくこんな文言が入っています。「本契約を証するため本書 2 通を作成し、甲乙記名捺印の上、各 1 通を保有する」。

お互いの合意内容の保存のためです。ですから、契約書は締結のためにあるのでは無く、契約内容の確認、記録のため、証拠として保存するものなのです。

さて、契約締結に民法上の規制は無いと説明しました。

契約の締結の仕方に規制が無いので、電子契約に対する、法律上の定義や規制はありません。これが電子契約ですという一元的な決まりがなくて、いろいろな電子契約があり得るのです。

個別の法規制に注意
最後にややこしいことを言います。契約締結に関する一般的な規制はありませんが、個別の法律による規制はあります。例えば、お金の受け払いがある契約書は、法人税法により、保存義務があります。電子契約であれば、電子帳簿保存法の要件を満たした電子保存でなければいけません。また、建設業法では、契約書の交付が義務となっていて、電子契約で行う場合は本人確認やシステム上の要件があります。その他にも、個別にいろいろな法規制があります。

こうしてみると、わかりにくいことがいろいろですね。

6回の連載ですが、ポイントを絞って、わかりやすく説明していきます。次回は「契約のやり方に規則はありますか?」です。

 

 

※この記事は2023年2月2日に、ニッキンONLINEにリーテックスが寄稿したものです。

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