電子契約サービスの導入を検討する際、まず確認しておきたいのが「自社で扱う契約書は電子化できるのか」という点です。一部の契約は法令で「書面」での作成が義務付けられており、電子化できないものがあるため注意が必要です。ただし、近年は法改正が相次ぎ、電子化できる契約書類は年々拡大しています。
この記事では、電子化できる契約書類とできない契約書類について、2026年時点の最新法令にもとづいて一覧で解説します。電子契約サービスの導入・検討にあたっての判断材料としてご活用ください。
目次
【この記事の要点】電子化できる契約・できない契約
- 原則、多くの契約書は電子化できる:一般の契約は「証拠を残すこと」が目的のため、証拠力のある電子契約でも問題ありません。
- 一部の契約は「書面」が義務:法令で書面作成が義務付けられている契約は、原則として電子化できません。
- 電子化できる契約は年々拡大:2022年5月の不動産取引の電子化、2023年6月の特定商取引法改正、2025年10月の公証人法改正などにより、これまで電子化できなかった契約も電子化可能になっています。
- 保存には電子帳簿保存法への対応が必要:2024年1月から電子取引データの電子保存が義務化されており、電子契約したデータは要件を満たして保存する必要があります。
電子化できる契約書類とは
これまで書面で契約していたものを電子化することについて、法律的に問題がないのか疑問に思う人も多いでしょう。
実際には、多くの契約類型において契約書は必須ではなく、「口約束も契約のうち」と言われるように、口頭でも契約は成立します。しかし、口頭で契約した場合、後になって「本当にその契約をしたのか」「契約をしたとしても内容はどのようなものだったのか」を証明するのが困難なケースが出てきます。そこで、押印した紙の契約書を作成することで、裁判など万が一の事態が起きた際に使える証拠としてきました。
一般の契約において、契約書は証拠とすることが目的であるため、紙の契約書ではない「証拠力のある電子契約」でも問題がないことになります。一方で、契約書の交付・保存が法律で義務付けられているものもあり、契約の電子化は一律ではありません。
電子化できる契約書類の一例
以下は、電子化が可能な契約書類の代表例です。
- 取引基本契約書
- 業務委託契約書
- 秘密保持契約書(NDA)
- 代理店契約書
- 下請法3条書面
- 業務請負契約書
- 注文書・注文請書
- 工事請負契約書
- 委任契約書・準委任契約書
- 雇用契約書
- 保証契約書
上記のとおり、「契約書」という名前のものだけでなく、たとえば発注者が注文書を送り受注者が請書を出す「注文書・注文請書」のやりとりも電子化できます。そのほか、検収書や請求書などのさまざまな帳票類も、電子帳簿保存法などで電子化が認められています。
保証契約書は電子化できるのか
保証契約は、一般的に金銭の消費貸借契約の貸主等と保証人の間に成立する契約で、「書面」で行う必要がある契約の典型例の一つです。これは、保証人の意思確認が問題となる事例が多発したことから、2004年の民法改正の際に「保証契約は書面でしなければ効力を生じない」とされたためです(民法446条2項)。
このように「書面」が要求される契約は、特別な規定がなければ電子化できないことになります。しかし保証契約に関しては、上記改正の際に、電子文書(法律には「電磁的記録」と記載)によって契約された場合は書面で契約されたものとみなすという規定(民法446条3項)が設けられました。したがって、保証契約書は電子化することが可能です。
電子化できない契約書類とは
一方で、契約の中には口頭では成立せず、紙の契約書の作成が義務付けられているものも存在します。また、業法等において、契約書ではないものの、契約条件を記載した書面の作成が義務付けられているものもあります。法令上「書面」という文言があり、紙での作成が指定されているものは、現状では電子化できない契約書類に分類されます。
電子化が難しい理由の分類
電子化が適切でないとされている理由には、次のような分類があります。
- 公正証書を要求しているもの(公正証書は公証人の面前で作成される必要がある)
- 取引が対面で行われるなど、電子での取引が想定されないもの(質屋営業法等)
- 国際条約に基づくもの(国際海上物品運送法等)
- 契約を巡るトラブルが多発しているなど、書面での署名や押印の代替が困難なもの
これらに該当する契約類型については、電子契約サービスでの締結が難しい場合があります。ただし、後述するように、法改正によって電子化できる範囲は年々広がっています。
電子化できる契約は年々拡大している
社会のデジタル化が進むなか、書面を要求する法令の規定が電子取引の阻害要因になっていることが指摘され、法令は年々改正されています。IT書面一括法(正式名称「書面の交付等に関する情報通信の技術の利用のための関係法律の整備に関する法律」)により、民間同士の書面交付や書面手続きを義務づけていた法令が一括で改正され、電子的手段でも手続きが可能になるものが増えました。
ここでは、近年の主な法改正によって新たに電子化できるようになった契約類型を整理します。
2022年5月:不動産取引関係の契約書が電子化可能に
いわゆるデジタル改革関連法により、2022年5月から不動産取引関係の契約書が電子化できるようになりました。具体的には、次の書類が対象です。
- 定期借地契約書・定期借家契約書(借地借家法22条2項、38条2項)
- 定期建物賃貸借契約の説明書面(いわゆる38条書面)(借地借家法38条4項)
- 宅建業者の媒介契約書(宅地建物取引業法34条の2第11項)
- 不動産売買における重要事項説明書(宅地建物取引業法35条8項)
- マンション管理等の委託契約書(マンション管理適正化法73条3項)
2023年6月:特定商取引法の交付書面が電子化可能に
2023年6月の改正特定商取引法の施行により、従来は書面での交付が必要とされていた訪問販売などの交付書面(クーリングオフに関する書面)も、電子化できるようになりました。ただし、消費者の事前承諾を得ることが条件となっています。
2025年10月:公証人法改正で公正証書が電子化可能に
2025年10月1日施行の改正公証人法により、公正証書を原則として電子データで作成できるようになりました。これにより、これまで「公正証書が必要=電子化できない」とされてきた以下の契約が、電子データ(電子公正証書)での作成が可能になっています。
- 事業用定期借地契約(借地借家法23条)
- 企業担保権の設定または変更を目的とする契約(企業担保法3条)
- 任意後見契約書(任意後見契約に関する法律3条)
ただし注意点として、これらは電子公正証書として作成が可能になったものであり、民間の電子契約サービスで自由に締結できるわけではありません。作成にあたっては公証役場での手続きが必要です。
このように、かつては「電子化できない契約書」の代表例とされていた任意後見契約書なども、法改正によって電子化の道が開かれています。電子化できる契約書類は今後もさらに増えることが予想されるため、最新の法令を確認することが重要です。
電子契約した書類の保存には電子帳簿保存法への対応が必要
契約書を電子化する際に、あわせて押さえておきたいのが電子帳簿保存法です。2024年1月から、電子取引データ(電子的にやり取りした請求書・契約書など)は、原則として電子データのまま保存することが義務化されました。
保存にあたっては、「真実性の確保」(タイムスタンプの付与や訂正・削除履歴の管理など)と「可視性の確保」(取引年月日・金額・取引先での検索機能など)といった要件を満たす必要があります。電子契約を導入する際は、締結だけでなく、締結後のデータ保存が電子帳簿保存法の要件を満たしているかもあわせて確認しておきましょう。
Word原本のまま契約を完結できる「ONEデジPREMIUM」
電子契約を導入する際、契約書をWordで作成している企業に適した選択肢が、リーテックス株式会社の提供するONEデジPREMIUMです。
多くの電子契約サービスでは、Wordで作成した契約書を一度PDFに変換してから署名・保存する必要があります。これに対してONEデジPREMIUMは、Wordの原本そのものに電子署名を付与し、PDFに変換することなくWordのまま締結・修正・保管まで一貫して行える点が特徴です。契約書のフォーマットを変えることなく、変更履歴やコメントも保持したまま電子契約を業務フローに組み込めます。
ONEデジの基盤技術は、2024年2月にグレーゾーン解消制度を通じて、内閣総理大臣をはじめとする5大臣連名で電子署名法第2条第1項の「電子署名」に該当することが確認されており、国や地方公共団体の契約書でも使用できる高い信頼性を備えています。
リーテックスは、ONEデジPREMIUMのほかにも用途に応じた電子契約・電子署名サービスを展開しています。契約書の電子化に対応する「ONEデジ®Document」、各種証明書のデジタル化に特化した「ONEデジ®Certificate」、既存システムに電子署名機能を組み込む「ONEデジ®API」があり、自社の用途に応じて選べます。いずれも電子帳簿保存法が求める検索性や改ざん防止に対応しており、締結から保存まで一貫して電子化を進められます。
電子化できる契約書類に関するよくある質問
すべての契約書を電子化できますか?
いいえ。多くの契約書は電子化できますが、公正証書を必要とする契約など、一部は電子契約サービスで自由に締結できないものが残っています。ただし、法改正によって電子化できる範囲は年々拡大しており、2025年10月の公証人法改正では、任意後見契約書などが電子公正証書として作成可能になりました。
電子化できない契約書には何がありますか?
対面での取引が前提の契約や、国際条約に基づく契約などが該当します。従来は任意後見契約書・事業用定期借地契約・企業担保権設定契約も電子化できませんでしたが、2025年10月の公証人法改正により電子公正証書としての作成が可能になりました(公証役場での手続きが必要)。
雇用契約書は電子化できますか?
はい、雇用契約書は電子化できます。労働条件の明示についても、労働者が希望した場合には電子メール等での明示が認められています。
電子化した契約書はどのように保存すればいいですか?
2024年1月から、電子取引データは電子帳簿保存法にもとづき電子データのまま保存することが義務化されています。タイムスタンプの付与や検索機能の確保など、真実性・可視性の要件を満たした形で保存する必要があります。
まとめ
契約書の電子化は、一般の契約であれば原則として可能ですが、法令で「書面」が義務付けられている一部の契約には注意が必要です。ただし、2022年の不動産取引の電子化、2023年の特定商取引法改正、2025年の公証人法改正など、法改正のたびに電子化できる契約書類は拡大しており、かつて電子化できないとされていた契約も可能になってきています。
電子契約の導入を検討する際は、自社で扱う契約書がどの区分に該当するかを最新の法令にもとづいて確認するとともに、締結後のデータ保存が電子帳簿保存法の要件を満たしているかも押さえておくことが大切です。Word原本のまま締結から保管まで完結できるONEデジPREMIUMのようなサービスも活用しながら、自社に合った電子契約の進め方を検討してみてください。
(※本記事は2026年8月時点の情報にもとづいています。法改正により変更となる場合がありますので、最新情報は各府省庁の公表資料をご確認ください。)
参考・一次情報
- 法務省「公証制度について」:https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00048.html
- 国税庁「電子帳簿保存法の概要」:https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/
関連記事
契約・署名の法的効力について詳しく知りたい方はこちら
契約書の署名が持つ法的効力とその注意点とは?
あわせて読みたい

