雇用契約書とは?労働条件通知書との違いや記載事項、作成方法を徹底解説

雇用契約書とは?労働条件通知書との違いや記載事項、作成方法を徹底解説

はじめに

従業員を雇用する際、必ず必要となるのが「雇用契約書」です。しかし、雇用契約書と労働条件通知書の違いを正しく理解していない企業担当者も少なくありません。また、記載すべき事項が不十分だったり、法的要件を満たしていない契約書を使用していたりすることで、後々トラブルに発展するケースも多く見られます。

本記事では、雇用契約書の基本的な知識から、労働条件通知書との違い、記載すべき事項、作成手順、変更時の対応、トラブル回避のポイント、そして電子化による効率化まで、企業の人事担当者が知っておくべき情報を網羅的に解説します。

正しい雇用契約書の作成・管理は、従業員との信頼関係を構築し、労働紛争を未然に防ぐための重要な基盤となります。本記事を参考に、自社の雇用契約書を見直してみてください。

雇用契約書の基本理解

雇用契約書は、企業と従業員の間で結ばれる雇用契約の内容を書面にまとめた重要な文書です。まずは雇用契約書の基本的な定義と目的、法的効力について理解しましょう。

雇用契約書の定義と目的

雇用契約書とは、企業(使用者)と従業員(労働者)の間で締結される雇用契約の内容を明確に記載した書面です。

雇用契約の定義: 民法第623条において、雇用契約は「当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる」と定められています。つまり、労働者が労働を提供し、使用者が報酬を支払うという合意が雇用契約の本質です。

雇用契約書の目的: 雇用契約書を作成する主な目的は以下の通りです:

  1. 労働条件の明確化:給与、労働時間、休日、勤務地などの労働条件を明確に示すことで、双方の認識のずれを防ぎます。
  2. トラブルの予防:契約内容を書面で残すことで、後々の「言った・言わない」というトラブルを防止できます。
  3. 法的証拠としての機能:万が一紛争が発生した場合、雇用契約書は重要な法的証拠となります。
  4. 企業の信頼性向上:適切な雇用契約書を交付することで、企業としての信頼性が高まり、従業員の安心感にもつながります。

雇用契約書の法的効力

雇用契約書は、単なる社内文書ではなく、法的な効力を持つ重要な契約書類です。

契約の成立: 労働契約法第6条では、「労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する」と定められています。つまり、雇用契約は口頭での合意でも成立しますが、書面化することで契約内容を明確に証明できます。

法的拘束力: 一度締結された雇用契約書の内容は、労使双方を法的に拘束します。企業側は契約書に記載された条件で従業員を雇用する義務があり、従業員側も契約内容に従って労働を提供する義務があります。

変更の制限: 労働契約法第8条では、労働契約の内容を変更する場合、労使双方の合意が必要であると定められています。企業が一方的に労働条件を不利益に変更することはできません。

雇用契約書の必要性

法律上、雇用契約書の作成自体は必須ではありませんが、実務上は極めて重要です。

労働基準法による義務: 労働基準法第15条では、使用者は労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならないと定められています。ただし、この明示は必ずしも「雇用契約書」という形式である必要はなく、「労働条件通知書」でも可能です。

雇用契約書を作成すべき理由

  1. 紛争予防:労働条件を書面で明確にすることで、将来的なトラブルを大幅に減らせます。
  2. 従業員の安心感:明確な契約書を提示することで、従業員は安心して働くことができます。
  3. 企業のコンプライアンス:適切な雇用契約書の作成は、企業のコンプライアンス体制を示す重要な要素です。
  4. 紛争時の証拠:万が一労働紛争が発生した場合、雇用契約書は企業を守る重要な証拠となります。

労働条件通知書との違い

雇用契約書とよく混同されるのが「労働条件通知書」です。両者の違いを正しく理解することが重要です。

労働条件通知書の役割と重要性

労働条件通知書は、労働基準法第15条に基づき、使用者が労働者に対して交付しなければならない書面です。

労働条件通知書の法的義務: 労働基準法第15条第1項では、「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない」と定められています。また、同条第2項では、「前項の規定によって明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる」とされています。

記載すべき事項: 労働条件通知書には、以下の事項を記載する必要があります:

絶対的明示事項(必ず書面で明示)

  1. 労働契約の期間
  2. 就業の場所及び従事すべき業務
  3. 始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇、交替制勤務をさせる場合の就業時転換
  4. 賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期
  5. 退職(解雇の事由を含む)

相対的明示事項(定めがある場合に明示)

  1. 退職手当
  2. 臨時に支払われる賃金、賞与等
  3. 食費、作業用品等の負担
  4. 安全衛生
  5. 職業訓練
  6. 災害補償及び業務外の傷病扶助
  7. 表彰及び制裁
  8. 休職

雇用契約書と労働条件通知書の違い

雇用契約書と労働条件通知書は、目的や性質が異なります。

主な違い

項目雇用契約書労働条件通知書
法的義務任意(義務ではない)必須(労働基準法で義務付け)
性質双方向の合意文書一方的な通知文書
署名・押印労使双方が署名・押印使用者のみが署名・押印
内容労働条件+契約条項労働条件のみ
目的契約内容の合意労働条件の明示

実務上の対応

多くの企業では、雇用契約書と労働条件通知書を兼ねた書面を作成しています。これは、労働条件通知書に記載すべき事項を含めた雇用契約書を作成し、労使双方が署名・押印することで、法的義務を果たしつつ、契約内容の合意も得るという方法です。

一体化のメリット

  1. 書類管理の効率化
  2. 従業員への説明の簡略化
  3. 法的義務と契約合意の同時達成

ただし、一体化する場合でも、労働条件通知書として必要な事項が全て含まれているかを確認する必要があります。

雇用契約書に記載すべき事項

雇用契約書には、法律で定められた事項に加えて、企業独自の条項を盛り込むことができます。

絶対的明示事項と相対的明示事項

前述の通り、労働基準法では明示すべき事項が定められています。これらは雇用契約書にも必ず記載すべきです。

絶対的明示事項の詳細

1. 労働契約の期間

  • 期間の定めの有無
  • 有期雇用の場合は契約期間(例:2024年4月1日〜2025年3月31日)
  • 更新の有無と更新基準

2. 就業の場所及び従事すべき業務

  • 採用時の就業場所
  • 従事する業務内容
  • 将来的な配置転換の可能性

3. 労働時間等

  • 始業・終業時刻(例:9:00〜18:00)
  • 休憩時間(例:12:00〜13:00)
  • 所定労働時間を超える労働(残業)の有無
  • 休日(週休2日制、土日祝日など)
  • 休暇(年次有給休暇、特別休暇など)

4. 賃金

  • 基本給の額と計算方法
  • 諸手当の種類と金額
  • 賃金の締切日と支払日
  • 支払方法(銀行振込など)
  • 昇給に関する事項

5. 退職に関する事項

  • 定年制の有無と定年年齢
  • 自己都合退職の手続き
  • 解雇事由

固定残業代の記載ポイント

近年、固定残業代制度を導入する企業が増えていますが、記載方法を誤るとトラブルの原因となります。

固定残業代制度とは: あらかじめ一定時間分の残業代を基本給や手当に含めて支払う制度です。実際の残業時間がその時間を超えた場合は、超過分を別途支払う必要があります。

適法な固定残業代の記載要件

  1. 固定残業代の金額の明示: 「基本給のうち、◯◯円は固定残業代として支払う」と明確に記載する。
  2. 対象時間の明示: 「固定残業代は月◯◯時間分の時間外労働に対する割増賃金として支払う」と記載する。
  3. 超過分の支払い: 「月◯◯時間を超える時間外労働を行った場合は、別途割増賃金を支払う」と記載する。

記載例

月給:300,000円
(内訳)
基本給:250,000円
固定残業代:50,000円

※固定残業代は、月30時間分の時間外労働、休日労働、深夜労働に対する割増賃金として支払います。
※月30時間を超える時間外労働、休日労働、深夜労働を行った場合は、別途割増賃金を支払います。

その他の重要な記載事項

法定の明示事項以外にも、雇用契約書に記載すべき重要な事項があります。

試用期間

  • 試用期間の長さ(通常3〜6か月)
  • 試用期間中の労働条件
  • 本採用の判断基準

守秘義務

  • 在職中および退職後の守秘義務
  • 対象となる情報の範囲
  • 違反した場合の取り扱い

競業避止義務

  • 在職中および退職後の競業避止義務
  • 対象となる業務や地域の範囲
  • 義務期間

知的財産権

  • 職務発明の取り扱い
  • 著作権の帰属
  • 特許や商標の取り扱い

副業・兼業

  • 副業・兼業の可否
  • 許可が必要な場合の手続き
  • 禁止される副業の範囲

雇用契約書の作成手順

適切な雇用契約書を作成するための手順を解説します。

雇用契約書作成のポイント

1. 雇用形態の確認 まず、採用する従業員の雇用形態を明確にします。正社員、契約社員、パート・アルバイトなど、雇用形態によって契約書の内容が変わります。

2. テンプレートの選定 自社の業種や規模、雇用形態に適したテンプレートを選定します。インターネット上には無料のテンプレートも多数ありますが、自社の実情に合わせてカスタマイズする必要があります。

3. 必須事項の記載確認 労働基準法で定められた絶対的明示事項が全て含まれているか確認します。

4. 自社特有の条項の追加 業界特有のルールや、自社独自の制度がある場合は、適切な条項を追加します。

5. 法的チェック 作成した契約書が労働関連法規に違反していないか、専門家(社会保険労務士や弁護士)にチェックしてもらうことを推奨します。

6. 従業員への説明 契約書を交付する際は、内容を丁寧に説明し、疑問点があれば回答します。一方的に署名を求めるのではなく、納得してもらうことが重要です。

雇用契約書作成時の注意点

1. 就業規則との整合性 雇用契約書の内容は、就業規則と矛盾してはいけません。ただし、就業規則よりも有利な条件を個別に定めることは可能です。

2. 法定最低基準の遵守 賃金、労働時間、休日などは、労働基準法や最低賃金法などの法定最低基準を下回ってはいけません。

3. 曖昧な表現の回避 「相当の期間」「適宜」「概ね」などの曖昧な表現は避け、具体的な数字や条件を記載します。

4. 不利益条項の排除 労働者に著しく不利益な条項(過度に長い試用期間、不当な競業避止義務など)は無効となる可能性があります。

5. 最新の法令への対応 労働関連法規は頻繁に改正されるため、常に最新の法令に対応した内容にする必要があります。

雇用契約書の雛形利用時の注意点

インターネット上には多数の雇用契約書の雛形(テンプレート)が公開されていますが、そのまま使用するのは危険です。

雛形利用時のチェックポイント

  1. 法令の更新確認: 雛形が最新の法令に対応しているか確認します。古い雛形では、最新の労働基準法に対応していない可能性があります。
  2. 業種・職種への適合性: 一般的な雛形は、特定の業種や職種に特化していません。自社の業種や職種に必要な条項が含まれているか確認します。
  3. 自社制度との整合性: 雛形に記載されている制度(退職金制度、福利厚生など)が自社に存在しない場合は、その部分を削除または修正する必要があります。
  4. 不要な条項の削除: 自社に関係のない条項は削除します。不要な条項を残しておくと、後々トラブルの原因となります。
  5. 専門家のチェック: 可能であれば、社会保険労務士や弁護士に確認してもらうことをおすすめします。

雇用契約書の変更手続き

一度締結した雇用契約の内容を変更する場合の手続きについて解説します。

労働条件変更時の対応

労働契約法第8条では、「労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる」と定められています。

変更の原則: 労働条件の変更には、原則として労働者の同意が必要です。企業が一方的に変更することはできません。

変更手続きの流れ

1. 変更の必要性の確認 なぜ変更が必要なのか、合理的な理由があるかを確認します。

2. 従業員への説明 変更内容と変更理由を従業員に丁寧に説明します。

3. 同意の取得 従業員の同意を得ます。書面で同意を得ることが望ましいです。

4. 変更契約書の作成 変更内容を明記した変更契約書を作成します。

5. 変更契約書への署名 労使双方が署名・押印します。

6. 変更契約書の交付 従業員に変更契約書を交付します。

不利益変更の場合の注意点

労働条件を従業員に不利益に変更する場合(賃金の減額、労働時間の延長など)は、特に慎重な対応が必要です。

  • 変更の必要性が高く、合理的な理由がある
  • 従業員への不利益が最小限に抑えられている
  • 代償措置が講じられている
  • 十分な説明と協議が行われている

これらの要件を満たさない不利益変更は、無効となる可能性があります。

雇用契約書の不備によるトラブル

雇用契約書の不備は、様々なトラブルを引き起こす原因となります。

雇用契約書違反の影響

企業側の違反

企業が雇用契約書の内容に違反した場合、以下のような影響があります:

  1. 損害賠償請求: 従業員から損害賠償を請求される可能性があります。
  2. 労働基準監督署の是正勧告: 労働基準法違反として、労働基準監督署から是正勧告を受ける可能性があります。
  3. 企業イメージの低下: SNSなどで拡散され、企業イメージが損なわれる可能性があります。
  4. 採用難: 労働条件を守らない企業として認識され、今後の採用活動に悪影響を及ぼします。

従業員側の違反

従業員が雇用契約書の内容に違反した場合(守秘義務違反、競業避止義務違反など)、企業は以下の対応が可能です:

  1. 懲戒処分: 就業規則に基づき、懲戒処分を行うことができます。
  2. 損害賠償請求: 違反により企業に損害が生じた場合、損害賠償を請求できます。
  3. 契約解除: 重大な違反の場合、雇用契約を解除(解雇)することも可能です。

雇用契約書に関するトラブルと対処法

よくあるトラブル事例

1. 固定残業代に関するトラブル

  • 問題:固定残業代の記載が不明確で、実際の残業代が支払われていないと主張される。
  • 対処法:固定残業代の金額、対象時間、超過分の支払いを明確に記載する。

2. 試用期間に関するトラブル

  • 問題:試用期間の延長や本採用拒否の基準が不明確で、不当だと主張される。
  • 対処法:試用期間の長さ、評価基準、延長や本採用拒否の条件を明確に記載する。

3. 業務内容の変更に関するトラブル

  • 問題:契約書に記載された業務内容と実際の業務が大きく異なり、契約違反だと主張される。
  • 対処法:業務内容を具体的に記載するとともに、「会社の指示する業務」など、柔軟性を持たせる記載も併記する。

4. 退職に関するトラブル

  • 問題:退職時の手続きや退職金の支払いについて認識が異なる。
  • 対処法:退職手続き、退職金の計算方法、支払時期を明確に記載する。

トラブル予防のポイント

  1. 明確な記載:曖昧な表現を避け、具体的に記載する。
  2. 丁寧な説明:契約締結時に内容を丁寧に説明し、疑問点を解消する。
  3. 定期的な見直し:法改正や社内制度の変更に応じて、定期的に見直す。
  4. 専門家の活用:疑問点があれば、社会保険労務士や弁護士に相談する。

雇用契約の効率化方法

近年、雇用契約の効率化が進んでいます。特に電子化は、業務の大幅な効率化を実現します。

雇用契約書の電子化

電子契約のメリット

  1. 業務効率の向上: 印刷、製本、郵送、保管といった作業が不要になり、契約締結までの時間を大幅に短縮できます。
  2. コスト削減: 印刷代、郵送費、保管スペース代などのコストを削減できます。
  3. コンプライアンスの強化: 契約の履歴が自動的に記録され、いつ誰が契約を締結したかが明確になります。
  4. リモートワーク対応: 従業員が遠隔地にいても、オンラインで契約締結が可能です。
  5. 環境への配慮: ペーパーレス化により、環境負荷を軽減できます。

電子契約の法的有効性

電子署名法により、一定の要件を満たす電子契約は、書面による契約と同等の法的効力を持ちます。

ONEデジによる雇用契約の効率化

リーテックス株式会社が提供する電子契約サービスは、雇用契約書の電子化を強力にサポートします。

ONEデジDocument – 電子契約に最適: 雇用契約書などの契約書類を電子化し、双方の署名を簡単に取得できる電子契約サービスです。QRコード技術とブロックチェーン技術により、契約内容の真正性と改ざん防止を実現します。

2024年2月、グレーゾーン解消制度を通じて、内閣総理大臣、総務大臣、法務大臣、財務大臣、経済産業大臣の5人の大臣から、電子署名法への適合、国の契約事務や地方公共団体の契約での利用可能性が公式に認められました。人事・労務管理において、厳格な法的要件が求められる雇用契約書についても、安心して電子化できることが保証されています。

ONEデジCertificate – アップロードするだけで電子署名: 各種証明書のデジタル化に特化したサービスです。証明書をアップロードするだけで、自動的に電子署名が付与されます。複雑な設定や操作は一切不要で、誰でも簡単に証明書をデジタル化できます。

雇用契約電子化の実務

  1. 既存の雇用契約書をPDF化またはWord形式で保存
  2. ONEデジDocumentにアップロード
  3. 従業員にメール送信
  4. 従業員がスマートフォンやPCで確認・署名
  5. 自動的に電子署名とタイムスタンプが付与され、契約完了

このプロセスは最短で数分で完了し、遠隔地にいる従業員との契約締結も即座に行えます。

雇用契約書の更新・終了・解約に関する実務ガイド

一度締結された雇用契約も、契約期間の満了、事業環境の変化、従業員の状況の変化により、更新や終了、解約が必要になる場合があります。

有期雇用契約の更新手続き

有期雇用契約(契約社員、パート・アルバイトなど)は、契約期間が満了すると自動的に終了します。契約を継続する場合は、更新手続きが必要です。

更新手続きのタイミング: 契約期間満了の30日前までには、更新の有無を従業員に通知することが望ましいです。

更新時の確認事項

  1. 労働条件の変更の有無:給与、労働時間などに変更がないか確認します。
  2. 業務内容の変更:従事する業務に変更がある場合は、明確に説明します。
  3. 契約期間:次回の契約期間を明確にします。

更新拒否(雇止め)の注意点: 有期雇用契約を更新しない場合(雇止め)は、以下の点に注意が必要です:

  • 過去に何度も更新されており、実質的に無期雇用と同じ状態になっている場合は、雇止めに合理的な理由が必要です。
  • 雇止めの理由を書面で明示する必要があります。
  • 30日前までに予告するか、予告手当を支払う必要があります(一定の場合)。

無期転換ルール: 同じ使用者との間で、有期労働契約が通算5年を超えて反復更新された場合、労働者の申込みにより、無期労働契約に転換されます(労働契約法第18条)。これを「無期転換ルール」といいます。

雇用契約の終了事由

雇用契約が終了する主な事由は以下の通りです:

1. 契約期間の満了 有期雇用契約の場合、契約期間が満了すると契約は終了します(更新しない場合)。

2. 定年 就業規則で定められた定年年齢に達すると、契約は終了します。ただし、高年齢者雇用安定法により、65歳までの雇用確保措置が義務付けられています。

3. 自己都合退職 従業員からの退職申し出により、契約が終了します。民法では、退職の2週間前までに申し出れば退職できるとされていますが、多くの企業では就業規則で1か月前などと定めています。

4. 合意退職 労使双方の合意により、契約を終了させることもできます。

5. 解雇 使用者からの一方的な意思表示により契約を終了させることです。ただし、解雇には客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が必要です(労働契約法第16条)。

雇用契約終了時の手続きチェックリスト

雇用契約が終了する際、以下の手続きを漏れなく行う必要があります:

退職前(1〜2か月前)

  • □ 退職願・退職届の受理
  • □ 業務の引継ぎ計画の作成
  • □ 有給休暇の残日数確認と消化スケジュールの調整

退職前(2週間〜1週間前)

  • □ 社会保険(健康保険・厚生年金保険)の資格喪失手続き
  • □ 雇用保険の資格喪失手続き
  • □ 退職金の計算(退職金制度がある場合)
  • □ 最終給与の計算

退職日当日

  • □ 社員証、名刺、貸与品(PC、携帯電話など)の返却確認
  • □ 業務引継ぎの完了確認
  • □ 退職証明書の交付(従業員から請求があった場合)

退職後(速やかに)

  • □ 離職票の交付(雇用保険)
  • □ 源泉徴収票の交付
  • □ 健康保険被保険者資格喪失証明書の交付(従業員から請求があった場合)
  • □ 年金手帳の返却
  • □ 退職金の支払い(退職金制度がある場合)

退職後(必要に応じて)

  • □ 競業避止義務の確認(該当する場合)
  • □ 秘密保持契約の再確認(必要な場合)

労働紛争を防ぐための実務ポイント

雇用契約の終了時は、トラブルが発生しやすいタイミングです。以下のポイントに注意しましょう:

1. 丁寧なコミュニケーション 退職理由や経緯を丁寧にヒアリングし、可能であれば改善策を提示します。従業員が納得して退職できるよう、誠実に対応することが重要です。

2. 書面での確認 退職の意思表示、退職日、未払い給与の有無など、重要事項は必ず書面で確認します。

3. 法定手続きの遵守 退職に関する法定手続き(社会保険の資格喪失手続き、離職票の交付など)を確実に行います。

4. 退職金の適切な計算と支払い 退職金規程に基づき、正確に計算し、所定の期日までに支払います。

5. 守秘義務・競業避止義務の確認 退職後も有効な守秘義務や競業避止義務について、改めて確認します。

6. 円満退職の促進 可能な限り円満退職を目指します。退職者が企業の悪評を流すことは、企業イメージや採用活動に悪影響を及ぼします。

よくある質問

雇用契約に関してよく寄せられる質問とその回答をまとめました。

Q1: 雇用契約書は必ず作成しなければならないのですか? A: 法律上、雇用契約書の作成自体は義務ではありません。ただし、労働基準法第15条により、労働条件を書面で明示する義務があります。実務上は、労働条件通知書と雇用契約書を兼ねた書面を作成し、労使双方が署名・押印することが一般的です。

Q2: 口頭での雇用契約は有効ですか? A: 口頭での雇用契約も法的には有効です。しかし、後々のトラブルを防ぐため、必ず書面で契約内容を明確にすることを強くおすすめします。

Q3: 試用期間中は雇用契約書を作成しなくてもいいですか? A: いいえ。試用期間中であっても、雇用契約は成立しており、労働条件の明示義務があります。試用期間の長さや条件を含めた雇用契約書を作成する必要があります。

Q4: アルバイトやパートにも雇用契約書は必要ですか? A: はい。雇用形態に関わらず、全ての労働者に対して労働条件を書面で明示する義務があります。アルバイトやパートであっても、雇用契約書(または労働条件通知書)を交付する必要があります。

Q5: 雇用契約書に署名を拒否する従業員がいる場合、どうすればいいですか? A: まず、署名を拒否する理由を丁寧にヒアリングします。契約内容に疑問や不安がある場合は、十分に説明し、理解を得るよう努めます。それでも署名を拒否する場合、その経緯を記録に残し、最低限、労働条件通知書は交付します。

Q6: 入社後に雇用契約書の内容を変更することはできますか? A: 労働契約の内容を変更する場合、原則として労働者の同意が必要です(労働契約法第8条)。変更内容を明確にした変更契約書を作成し、労使双方が署名・押印することが望ましいです。

Q7: 従業員が雇用契約書を紛失した場合、再発行は必要ですか? A: 法的な再発行義務はありませんが、従業員が希望する場合は再発行することが望ましいです。電子契約の場合は、システム上でいつでも確認できるため、紛失の心配がありません。

Q8: 外国人従業員の雇用契約書は日本語でなければなりませんか? A: 法律上、契約書の言語は特に定められていません。ただし、労働条件の明示義務を果たすため、従業員が理解できる言語で作成するか、日本語版に加えて母国語版も用意することが望ましいです。

Q9: 雇用契約書と労働条件通知書を別々に作成する必要がありますか? A: 法律上は別々に作成する必要はありません。多くの企業では、労働条件通知書の内容を含む雇用契約書を作成し、労使双方が署名・押印することで、両方の役割を果たしています。

Q10: 雇用契約書の保管期間はどのくらいですか? A: 労働基準法では、労働者名簿や賃金台帳は5年間(当面の間は3年間)の保存義務がありますが、雇用契約書自体の保存期間は明確に定められていません。ただし、実務上は、在職中はもちろん、退職後も5年間程度は保管しておくことが望ましいです。紛争が発生した場合の証拠となるためです。

まとめ

本記事では、雇用契約書の基本から、労働条件通知書との違い、記載すべき事項、作成手順、変更手続き、トラブル回避のポイント、電子化による効率化、そして契約の更新・終了・解約に関する実務まで、包括的に解説してきました。

重要なポイント

  1. 雇用契約書の重要性:雇用契約書は、企業と従業員の間の権利義務関係を明確にし、トラブルを予防する重要な文書です。
  2. 労働条件通知書との違い:労働条件通知書は法的義務がある一方向の通知文書、雇用契約書は双方向の合意文書です。実務上は両方を兼ねた書面を作成することが一般的です。
  3. 記載すべき事項:労働基準法で定められた絶対的明示事項は必ず記載し、固定残業代などの特殊な制度は、法的要件を満たす記載が必要です。
  4. 作成時の注意点:就業規則との整合性、法定最低基準の遵守、曖昧な表現の回避が重要です。雛形を使用する場合は、自社の実情に合わせてカスタマイズします。
  5. 変更手続き:労働条件を変更する場合、原則として従業員の同意が必要です。特に不利益変更の場合は慎重な対応が求められます。
  6. トラブル予防:明確な記載、丁寧な説明、定期的な見直しがトラブル予防の鍵です。
  7. 電子化のメリット:ONEデジDocumentのような政府認定を受けた電子契約サービスを活用することで、業務効率化、コスト削減、コンプライアンス強化が実現できます。
  8. 契約の更新・終了:有期雇用契約の更新手続き、雇止め、退職時の手続きなど、契約の終了時にも適切な対応が必要です。

適切な雇用契約書の作成・管理は、従業員との信頼関係を構築し、企業の健全な成長を支える基盤となります。本記事を参考に、自社の雇用契約書を見直し、より良い労使関係の構築に役立ててください。

また、雇用契約の電子化は、これからの人事・労務管理において不可欠な取り組みです。ONEデジDocumentのような信頼性の高い電子契約サービスの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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