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年末調整とは
年末調整とは、会社が従業員の給与から天引きした所得税を精算する手続きのことを指します。毎年12月になると会社から様々な書類を渡され、記入を求められた経験がある方も多いのではないでしょうか。
実は、毎月の給与から天引きされている所得税は、あくまでも概算の金額です。そのため、1年間の給与総額が確定する年末に改めて正確な所得税額を計算し直し、払いすぎていた税金を還付したり、逆に不足分があれば徴収したりする必要があります。これが年末調整の基本的な仕組みです。
なぜ年末調整が必要なのか
では、なぜ毎月天引きされている税額と実際の税額にズレが生じるのでしょうか。その理由はいくつかあります。
まず、生命保険料や地震保険料といった各種保険料の控除が、毎月の給与計算には反映されていません。また、年の途中で結婚したり子どもが生まれたりして扶養家族が増えた場合、その変動も月々の天引き額には即座に反映されません。さらに、昇給や残業の増減によって給与が大きく変動すると、適用される税率が変わる可能性もあります。
こうした様々な要因を年末にまとめて精算することで、正確な税額を確定させることができます。その結果、多くの方は払いすぎた税金が還付金として戻ってくることになります。
年末調整の対象者
年末調整を受けられるのは、基本的に年末時点で会社に在籍している従業員です。1年間継続して勤務している方はもちろん、年の途中で就職して年末まで働いている方も対象になります。また、年の途中で一度退職したものの、別の会社に再就職して年末調整をまだ受けていない方も、新しい勤務先で手続きを受けることができます。
一方で、年末調整の対象外となるケースもあります。年収が2,000万円を超える高所得者の方や、2か所以上から給与を受け取っている方は年末調整だけでは完結せず、確定申告が必要です。ただし、2か所以上から給与を受けている場合でも、メインの勤務先では年末調整を受けることができます。
また、年の途中で退職した方も基本的には対象外となりますが、いくつか例外があります。いずれにしても、年末調整の対象外となった方は、原則として翌年2月16日から3月15日までの期間に確定申告を行う必要があります。
年末調整の手続きの流れ

年末調整の手続きは、通常10月頃から始まります。会社から配布される書類と、自宅に届く各種の控除証明書を準備する必要があるため、早めに準備を始めることが大切です。
まず、会社から配布される書類には、給与所得者の扶養控除等申告書、保険料控除申告書、そして基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書があります。これらの書類には、家族構成や所得、加入している保険などの情報を記入していきます。
並行して、保険会社や金融機関から送られてくる控除証明書を集めておきましょう。生命保険料控除証明書や地震保険料控除証明書は10月から11月頃に自宅に郵送されてきます。住宅ローンを利用している方で2年目以降の方は、住宅借入金等特別控除証明書も必要です。国民年金保険料を自分で支払っている方は、日本年金機構から送られてくる控除証明書も忘れずに用意してください。
書類の記入と証明書の準備が整ったら、会社の指定する期限までに提出します。多くの会社では11月末から12月初旬を締切としていますが、会社によって異なるため、早めの提出を心がけましょう。提出後、会社の経理担当者が年末調整の計算を行い、12月の給与支給時に還付金が支払われるか、不足分が徴収されることになります。
主な控除項目

基礎控除
全員に適用される控除で、所得金額に応じて最大48万円が控除されます。
配偶者控除・配偶者特別控除
配偶者の所得が一定以下の場合に適用される控除です。配偶者の年収が103万円以下なら配偶者控除、103万円超201万円以下なら配偶者特別控除が適用されます。
扶養控除
扶養親族がいる場合に適用される控除です。扶養親族の年齢によって控除額が異なります。
- 一般の扶養親族:38万円
- 特定扶養親族(19歳以上23歳未満):63万円
- 老人扶養親族(70歳以上):48万円または58万円
生命保険料控除
生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料を支払っている場合に適用されます。各区分で最大4万円、合計最大12万円まで控除されます。
地震保険料控除
地震保険料を支払っている場合、最大5万円まで控除されます。
社会保険料控除
給与から天引きされている社会保険料のほか、国民年金保険料や国民健康保険料を自分で支払った場合も控除対象になります。
住宅ローン控除
住宅ローンを利用してマイホームを取得した場合、一定の要件を満たせば税額控除が受けられます。初年度は確定申告が必要ですが、2年目以降は年末調整で適用できます。
年末調整でよくある質問
年末調整について、多くの方が疑問に思うポイントをまとめました。
書類の提出を忘れてしまった場合はどうなるのでしょうか。この場合、残念ながら会社での年末調整を受けることができません。しかし、諦める必要はありません。翌年の2月16日から3月15日までの期間に自分で確定申告を行うことで、同様に控除を受けて還付金を受け取ることができます。
還付金の額について気になる方も多いでしょう。これは個人の控除額や給与額によって大きく異なりますが、一般的には数万円程度の還付を受けられるケースが多いようです。生命保険に加入していたり、扶養家族が多かったりすると、還付額も大きくなる傾向があります。
パートやアルバイトの方も年末調整の対象になるのか、という質問もよく寄せられます。答えは「はい」です。雇用形態に関係なく、年末時点で会社に勤務している方であれば、年末調整の対象となります。ただし、年収が少ない場合は、そもそも所得税が課税されていないこともあります。
副業をしている場合の扱いについても確認しておきましょう。メインの勤務先で年末調整を受けることはできますが、副業で得た収入については別途確定申告が必要になります。副業の所得が年間20万円を超える場合は、必ず確定申告を行いましょう。
年の途中で転職した場合はどうすればよいでしょうか。前の会社から発行される源泉徴収票を新しい会社に提出すれば、新しい会社でまとめて年末調整を受けることができます。前の会社の給与も含めて精算されるため、適切な税額が計算されます。
年末調整を正確に行うためのポイント

年末調整をスムーズに進め、適切な還付を受けるためには、いくつかのポイントを押さえておくことが大切です。
何よりも重要なのは、早めに準備を始めることです。控除証明書は10月頃から順次届き始めますが、複数の保険に加入している場合などは、すべての証明書が揃うまでに時間がかかることもあります。届いた証明書は一箇所にまとめて保管し、紛失しないように注意しましょう。書類を失くしてしまうと再発行に時間がかかり、年末調整に間に合わなくなる可能性があります。
記入漏れにも十分注意が必要です。特に配偶者や扶養親族の情報は、氏名、続柄、生年月日、マイナンバー、所得金額など、記入すべき項目が多くあります。一つでも記入漏れがあると、せっかくの控除が受けられなくなってしまいます。記入後は必ず見直しを行い、すべての欄が埋まっているか確認しましょう。
控除証明書を添付し忘れると、どんなに書類を正確に記入していても控除を受けることができません。提出前に、必要な証明書がすべて揃っているかチェックリストを作って確認するとよいでしょう。
2016年以降、年末調整の書類にはマイナンバーの記入が必須となっています。自分のマイナンバーだけでなく、配偶者や扶養親族のマイナンバーも必要になりますので、事前に確認しておきましょう。
年の途中で家族構成や生活状況に変化があった場合は、必ず申告することを忘れないでください。結婚した、子どもが生まれた、配偶者が退職したなど、様々な変化が税額に影響します。これらの変更を申告しないと、本来受けられるはずの控除が受けられなくなってしまいます。
まとめ
年末調整は、払いすぎた税金を取り戻すための重要な手続きです。必要書類を早めに準備し、期限内に正確な情報を提出することで、適切な還付を受けることができます。
不明な点がある場合は、会社の担当者や税務署に相談することをおすすめします。年末調整で対応できない控除項目がある場合は、確定申告を検討しましょう。

