今さら聞けない電子契約③「どの電子契約サービスを選び、どう管理すればいいの?」

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    「コラム:今さら聞けない電子契約②」では、電子契約を行う際に不可欠な電子署名について、そして電子契約に印紙税が課税されない理由を説明しました。

    今回は、どの電子契約サービスを選び、どう管理すべきかについて解説します。


    電子契約サービスの選び方

    電子契約サービスを選ぶ際、最大のポイントは「何の契約に使うのか」です。

    契約と言っても千差万別で、アルバイトの雇用契約のような少額かつ短期のものから、ビル建設のような高額かつ長期保存のものまで様々あります。

    さらに、個別の業法などで規制されているケースもあるため、まずは、どのような契約に使うのかを確認しましょう。また、月の契約数や上司に決裁をもらう必要があるかどうかもサービスを選ぶ際のポイントになります。

    一方で、電子契約の大きな役割は、締結の可否よりも、法的証拠になるかどうかです。

    電子署名法の第3条で「本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る)が行われているときは、真正に成立したものと推定する」と規定されています。

    この条文により、日本法上の電子署名が付与されている電子契約には証拠力があると見なされますが、海外の電子契約サービス(ソフト)を利用する際は注意が必要です。

    電子帳簿保存法に準拠しているかを選択基準に

    次に、契約を結ぶ「目的」は何かを考えたとき、ほとんどの契約は「金銭のやり取り」であると想像できます。

    このような契約は、税法上7年以上の保存が義務付けられています。また、電子契約であれば、電子帳簿保存法の規制を受けるため、最低でも「電子帳簿保存法に準拠していること」を選択基準にした方が良いでしょう。

    特に、電子帳簿保存法の検索要件を満たしているかどうかに気を付けなければいけません。これらは、公益社団法人日本文書情報マネジメント協会(略称:JIIMA)が認定を行っており、認定ソフトの一覧も掲載しているため、ぜひ参考にしてください。

    本人確認が課題

    さて、残る課題は本人確認です。

    電子帳簿保存法は、保存の要件を定めている法律であるため、本人確認の規定はありません。

    しかし、電子契約の要件を個別に定めている建設業法などでは、本人確認・身元確認を行うよう定められています。このため、対象の契約が個別業法の規制対象なのかを確認しなければなりません。なお、電子契約ソフトによっては、個別規制に対応した本人確認・身元確認が十分でないケースもあるため注意が必要です。

    セキュリティの強度や本人確認のレベルについては、契約の重要性によって個別に判断し、各電子契約ソフトで大きな違いがあることを理解したうえで選択しましょう。

    紙と電子の混在管理は、紛失リスクが発生

    ここまで電子契約サービスの導入を前提に解説してきましたが、現状「紙の契約がしたい」という取引相手も多く存在するため、すべての契約を電子化するのは難しいでしょう。

    実際、下請代金支払遅延等防止法(下請法)では、3条で「当該下請事業者の承諾を得て、当該書面に記載すべき事項を電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって公正取引委員会規則で定めるものにより提供することができる」と規定しています。

    下請取引での電子契約化には相手の同意が必要で、もちろん強要することはできません。そのため、当面「紙の契約書と電子契約書」が混在する状況がつづき、この2点を合わせて管理することが必須となります。

    また、電子契約にも様々なサービスがあり、取引先との関係で利用ソフトを変更したり、社内でも発注ソフトと人事労務管理ソフトで連携した電子契約が異なったりすることは、よくあります。

    ここで大事なのは、保存は一元管理でなければいけないということです。

    紙で契約することの難点は、紛失するリスクがあるということ。通常、契約書は顧客対応の際に必要なため、支店で管理するケースが大半です。しかし、本社の管理部門や複数の部署でも必要になると、紙の契約書が複数個所で行き来するため紛失リスクが高まります。

    契約を一括管理するソフトが便利

    その点、電子契約ならば紛失の心配がありません。

    紙の契約書をスキャンまたは写真撮影し電子化することで、物理的な保管場所を気にせずにアクセスでき、さらに検索もできます。

    なお、電子帳簿保存法やe文書法により、紙の契約を法規制の要件通りに電子化すれば、紙の原本を廃棄することも可能です。

    紙の契約書を電子保存して一括管理するメリットは極めて大きいため、コストはかかるものの「一考の価値がある」とお伝えしておきます。

    一方、電子化しても異なるソフトウェアを並行利用すると、ファイルの保存場所がわからなくなる恐れがあります。電子契約書をダウンロードして自身で保存することも可能ですが、検索や期日管理を考えると、契約を一括管理できるソフトの導入を強くお勧めします。

    ※この記事は2023年7月8日・8月6日「ニッキンONLINE」にリーテックスが寄稿したものを再編集し掲載しています。

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