デジタル化が進む現代において、電子署名と電子証明書は企業のDX推進において不可欠な技術となっています。しかし、この2つの違いや仕組みを正確に理解している方は少ないのではないでしょうか。本記事では、電子署名と電子証明書の基本概念から具体的な活用方法まで、わかりやすく詳しく解説いたします。
目次
電子署名と電子証明書の基本概念
電子署名の定義と役割
電子署名とは、電子文書の作成者が誰であるかを証明し、文書が改ざんされていないことを保証するデジタル技術です。紙の文書における印鑑やサインに相当する機能を、デジタル環境で実現するものと考えることができます。
電子署名の主な役割は以下の通りです:
本人認証(真正性の確保) 電子文書を作成・送信した人物が本人であることを証明します。第三者が成りすますことを防止し、取引の信頼性を確保します。
非改ざん性の保証 文書に電子署名を付与した後に内容が変更されていないことを証明します。ハッシュ関数という暗号技術を使用して、文書の完全性を保護します。
否認防止 署名者が後から「署名していない」と否認することを防ぎます。法的な証拠能力を持つため、契約書や重要書類の取引において重要な役割を果たします。
電子署名は公開鍵暗号方式という技術を基盤としており、署名者の秘密鍵で暗号化されたデジタル署名を、対応する公開鍵で検証することで真正性を確認します。実際の業務で活用する際には、この仕組みを理解することが重要です。
電子証明書の定義と機能
電子証明書とは、電子署名に使用する公開鍵が確実に本人のものであることを、信頼できる第三者機関(認証局:CA)が証明するデジタル証明書です。インターネット上での「身分証明書」や「印鑑証明書」の役割を担っています。
電子証明書には以下の情報が含まれています:
証明書保有者の情報 氏名、組織名、メールアドレス、所属部署など、証明書を利用する個人または法人の詳細情報が記録されています。
公開鍵情報 電子署名の検証に使用される公開鍵データが含まれています。この鍵は対応する秘密鍵とペアになっており、暗号化と復号の処理に使用されます。
認証局の署名 認証局が証明書の内容を保証するためのデジタル署名が付与されています。これにより、証明書自体の信頼性が確保されます。
有効期限 証明書が有効な期間が設定されており、期限切れ後は使用できません。セキュリティ維持のため、一般的に1年から3年程度の期限が設定されます。
電子証明書は、SSL/TLS通信、電子メールの暗号化、電子契約、e-Tax申告など、様々な用途で活用されています。これらのサービスを利用する際には、適切な電子証明書の選択が重要になります。
電子署名と電子証明書の違い
証明の対象と範囲
電子署名と電子証明書は密接に関連していますが、証明する対象と範囲が異なります。
電子署名が証明するもの
- 文書の作成者が署名者本人であること
- 署名後に文書が改ざんされていないこと
- 署名行為が確実に行われたこと
電子署名は特定の文書に対して付与され、その文書固有の証明を行います。文書ごとに個別の署名が必要であり、署名された時点での文書の状態を保証します。
電子証明書が証明するもの
- 公開鍵の正当な所有者が誰であるか
- 証明書保有者の身元情報
- 認証局による身元確認が適切に行われたこと
電子証明書は署名者の身元そのものを証明し、複数の文書に対する署名で繰り返し使用されます。証明書の有効期限内であれば、様々な取引や手続きで利用可能です。
発行者と信頼性の違い
電子署名の発行者 電子署名は文書の作成者または契約当事者が自ら作成します。署名の作成自体は特別な資格や認可を必要としませんが、法的な効力を持たせるためには適切な電子証明書と組み合わせる必要があります。
電子証明書の発行者 電子証明書は認証局(CA:Certificate Authority)という信頼できる第三者機関が発行します。認証局は厳格な身元確認手続きを経て証明書を発行し、その信頼性を保証します。
日本国内では以下のような認証局が運営されています:
- 政府認証基盤(GPKI)
- 地方公共団体組織認証基盤(LGPKI)
- 民間認証局(セコムトラストシステムズ、サイバートラスト等)
認証局の信頼性レベルによって、電子証明書の法的効力や利用可能な場面が決まります。

電子証明書を用いた電子署名のプロセス
電子証明書の取得方法
電子証明書を取得するプロセスは以下の手順で行われます:
1. 認証局の選択 用途や予算、必要な信頼性レベルに応じて適切な認証局を選択します。法人向け、個人向け、特定業界向けなど、様々な種類の証明書が提供されています。
2. 申請手続き 認証局の指定する方法で証明書発行の申請を行います。オンライン申請、郵送申請、窓口申請など、認証局によって手続き方法が異なります。
3. 身元確認 申請者の身元を確認するため、以下のような書類の提出が求められます:
- 個人:運転免許証、パスポート、住民票等
- 法人:登記事項証明書、印鑑証明書、代表者の身分証明書等
4. 鍵ペア生成 公開鍵と秘密鍵のペアを生成します。多くの場合、専用ソフトウェアやハードウェアトークンを使用して安全に生成されます。
5. 証明書発行 身元確認が完了すると、認証局から電子証明書が発行されます。証明書はファイル形式またはICカード等のハードウェアに格納されます。
リーテックス株式会社のONEデジCertificateでは、これらの複雑な手続きを簡単に行えるよう、直感的なインターフェースと充実したサポート体制を提供しています。
ONEデジの独自技術 ONEデジは従来の「鍵」方式を採用しない独自の電子署名技術を採用しています。令和6年2月に総務省、法務省、経済産業省から電子署名法第2条第1項に定める電子署名に該当するとの正式な確認を得ており、国や地方公共団体の契約書での利用が可能であることが公的に認められています。
電子署名の作成手順
電子証明書を取得した後の電子署名作成プロセス:
1. 文書の準備 署名を付与する電子文書(PDF、Word、Excel等)を準備します。文書の内容を最終確認し、署名後は変更できないことを理解しておくことが重要です。
2. ハッシュ値の計算 文書全体からハッシュ関数を使用してハッシュ値(文書の指紋のようなもの)を計算します。この値は文書が少しでも変更されると全く異なる値になります。
3. 電子署名の生成 秘密鍵を使用してハッシュ値を暗号化し、電子署名を生成します。この署名は文書に添付または埋め込まれます。
4. 証明書の添付 検証者が署名を確認できるよう、電子証明書の情報を文書に含めます。
5. 署名済み文書の送付 電子署名と電子証明書が含まれた文書を相手方に送付します。
6. 署名の検証 受信者は以下の手順で署名を検証します:
- 証明書の有効性確認
- 公開鍵を使用した署名の復号
- ハッシュ値の比較による改ざんチェック

電子署名と電子証明書の導入メリット
業務効率化とコスト削減
ペーパーレス化の実現 紙の契約書や書類が不要になり、印刷費用や郵送費、保管スペースの削減が可能です。年間数百万円のコスト削減を実現する企業も少なくありません。
契約締結期間の短縮 従来の紙ベースの契約では郵送や印鑑押印で数日から数週間かかっていた手続きが、電子契約では数時間から数日に短縮されます。
リモートワーク対応 場所を選ばずに契約締結や重要書類の承認が可能になり、テレワークの推進に大きく貢献します。
管理業務の自動化 電子化された文書は検索や整理が容易で、契約管理システムとの連携により、更新期限の管理や契約状況の把握が自動化されます。
ONEデジの革新的アプローチ 特筆すべきは、ONEデジが採用する独自の署名技術です。従来の公開鍵暗号方式とは異なるアプローチを採用することで、より簡単かつ安全な電子署名を実現しています。この技術は政府機関による厳格な審査を経て、令和6年2月29日に電子署名法に適合するとの正式な確認を受けており、公的機関での利用も認められています。
セキュリティの向上
改ざん防止 電子署名により文書の改ざんを技術的に防止し、万が一改ざんが行われた場合も即座に検出できます。
認証レベルの向上 電子証明書による確実な本人認証により、なりすましによる不正取引を防止します。
監査証跡の保持 誰が、いつ、どのような操作を行ったかの記録が自動的に保持され、コンプライアンス対応や監査に役立ちます。
暗号化による保護 文書の送信時や保存時の暗号化により、情報漏洩のリスクを大幅に軽減します。
電子署名と電子証明書の注意点
法的な有効性の確認
電子署名法の理解 日本では電子署名法により電子署名の法的効力が認められていますが、すべての文書で同等の効力があるわけではありません。
対象文書の確認 以下の文書は現在でも書面での作成が義務付けられている場合があります:
- 不動産売買契約書
- 定期借地契約書
- 訪問販売等のクーリングオフ書面
- 遺言書
認証レベルの選択 用途に応じて適切な認証レベルの電子証明書を選択する必要があります。高額取引や重要契約では、より高い認証レベルが求められる場合があります。
取引先との合意形成
事前の説明と合意 電子契約の導入前に、取引先に対して電子署名の仕組みや法的効力について十分な説明を行い、合意を得ることが重要です。
操作方法の案内 電子署名に不慣れな取引先に対して、操作方法の案内やサポート体制の整備が必要です。
代替手段の準備 技術的な問題や先方の都合により電子署名が利用できない場合に備え、従来の書面契約との併用体制を維持することも検討すべきです。
電子署名と電子証明書に関するよくある質問
電子署名と電子証明書について
Q: 電子署名と電子証明書の違いは何ですか?
A: 電子署名は文書に付与される「署名」そのもので、電子証明書は署名者の身元を証明する「身分証明書」の役割を果たします。電子署名を作成する際に電子証明書を使用することで、署名者が本人であることと文書が改ざんされていないことを証明できます。
Q: 電子署名に使用する電子証明書にはどのような種類がありますか?
A: 電子署名に使用する電子証明書には、主に個人向け証明書と法人向け証明書があります。個人向けは個人の身元確認を行い、法人向けは企業や組織の証明を行います。
電子署名の適用範囲
Q: すべての契約書で電子署名を使用できますか?
A: 日本では多くの契約書で電子署名の使用が可能ですが、一部制限があります。宅建業法、借地借家法、保険業法等で書面交付が義務付けられている文書については、個別に確認が必要です。
Q: 海外企業との契約でも電子署名は有効ですか?
A: 多くの国で電子署名の法的効力が認められていますが、国によって要件が異なります。国際契約では、両国の法律を確認し、必要に応じて国際的に認められた電子署名サービスの利用を検討することをお勧めします。
Q: 電子署名のセキュリティレベルはどの程度ですか?
A: 適切な電子証明書と暗号技術を使用した電子署名は、物理的な印鑑よりも高いセキュリティレベルを提供します。暗号化強度、認証局の信頼性、証明書の種類によって異なりますが、2048bit RSA暗号を使用した場合、現在の技術では解読は実質的に不可能とされています。
Q: 電子署名と電子印鑑の違いは何ですか?
A: 電子署名は暗号技術を使用して文書の真正性と完全性を証明する技術です。一方、電子印鑑は印影を電子化したもので、単純に画像として貼り付けただけでは法的効力は限定的です。確実な証明力を求める場合は、電子署名法に対応した電子署名の利用をお勧めします。
国際規格と相互運用性に関する考察
グローバル化が進む現代において、電子署名と電子証明書の国際的な相互運用性は企業にとって重要な課題となっています。多くの企業が海外展開や国際取引を行う中で、異なる国や地域の電子署名システム間での互換性確保は不可欠です。
国際標準規格の重要性
電子署名の分野では、以下のような国際標準が制定されています:
- ITU-T X.509: 公開鍵証明書とCRL(証明書失効リスト)の標準フォーマット
- RFC 3852: 暗号メッセージ構文(CMS)の仕様
- ISO 32000: PDF電子署名の国際標準
- ETSI EN 319 122: 欧州の電子署名標準(AdES形式)
これらの標準に準拠することで、異なるシステム間での署名の相互検証が可能になります。
地域別の電子署名法制
各国・地域の電子署名に関する法制度は以下のような特徴があります:
- 米国: ESIGN法により連邦レベルで電子署名の法的効力を認定
- EU: eIDAS規則により域内での電子署名の相互承認を実現
- 中国: 電子署名法により独自の認証体系を構築
- 日本: 電子署名法により特定認証業務の枠組みを規定
相互運用性実現のポイント
国際的な電子署名システムの相互運用性を実現するためには:
- 技術標準の統一: 国際標準に準拠したシステム構築
- 認証局間の相互認証: 各国の認証局間での信頼関係構築
- 法的枠組みの調和: 国際条約や相互承認協定の締結
- 運用ルールの統一: 証明書ポリシーや運用手順の標準化
ONEデジの技術的優位性 ONEデジは独自の署名技術を採用することで、従来の電子署名システムが抱える課題を解決しています。複雑な鍵管理が不要で、ユーザーはより簡単かつ直感的に電子署名を利用できます。この革新的な技術により、国際的な相互運用性を保ちながら、日本の法的要件を満たすソリューションを実現しています。
今後の展望
電子署名と電子証明書の技術は継続的に発展しており、以下のような動向が注目されています:
- 量子暗号技術: 量子コンピュータ時代に対応した新しい暗号方式の検討
- ブロックチェーン技術活用: 分散型台帳技術を活用した新しい認証システム
- 生体認証連携: 指紋や顔認証等との組み合わせによる多要素認証
- AI活用: 機械学習を活用した不正署名の自動検出
これらの新技術を取り入れながら、より安全で利便性の高い電子署名システムの構築が進んでいます。
まとめ
電子署名と電子証明書は、デジタル社会において不可欠な技術基盤となっています。両者の違いを正しく理解し、適切に活用することで、業務効率化、コスト削減、セキュリティ向上など多くのメリットを得ることができます。
特に重要なポイント:
- 電子署名は文書の真正性と完全性を証明し、電子証明書は署名者の身元を保証
- 認証局による厳格な身元確認により高い信頼性を実現
- 法的効力を持つが、対象文書や取引先との合意が重要
- 国際的な相互運用性を考慮したシステム選択が必要
リーテックス株式会社のONEデジCertificateは、学校を中心とした各種証明書発行に特化したサービスです。低コストで導入でき、PDFファイルをアップロードするだけで電子証明書として発行できます。二次元バーコードによる検証機能により、発行元と改ざんの有無を簡単に確認することが可能です。
証明書の電子化をご検討の教育機関や企業様は、ぜひONEデジ Certificateの詳細をご確認いただき、お気軽にお問い合わせください。
参考ページ
政府・省庁による公式資料
デジタル庁
- 電子署名について:https://www.digital.go.jp/policies/digitalsign
- 電子署名及び認証業務に関する法律(電子署名法)及び関係法令:https://www.digital.go.jp/policies/digitalsign_law
- 公的個人認証サービス(JPKI):https://www.digital.go.jp/policies/mynumber/private-business/jpki-introduction
- スマートフォンのマイナンバーカード:https://www.digital.go.jp/policies/mynumber/smartphone-certification
総務省
- 公的個人認証サービスによる電子証明書:https://www.soumu.go.jp/kojinbango_card/kojinninshou-01.html
- 公的個人認証サービスによる電子証明書(民間事業者向け):https://www.soumu.go.jp/kojinbango_card/kojinninshou-02.html
法務省
- 電子署名法の概要と認定制度について:https://www.moj.go.jp/MINJI/minji32.html
- 電子署名法の概要について:https://www.moj.go.jp/MINJI/minji32-1.html
- 電子署名法に基づく特定認証業務の認定について:https://www.moj.go.jp/MINJI/denshishomeihou.html
- 電子証明書取得のご案内(商業登記電子証明書):https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00028.html
経済産業省
- 利用者の指示に基づきサービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化等を行う電子契約サービスに関するQ&A:https://www.meti.go.jp/covid-19/denshishomei3_qa.html
- 電子署名及び認証業務に関する法律による認定認証業務一覧:https://www.meti.go.jp/policy/netsecurity/esig-srvlist.html
国税庁
- 電子証明書の取得(e-Tax):https://www.e-tax.nta.go.jp/systemriyo/systemriyo2.htm
特許庁
内閣府
- 書面規制、押印、対面規制の見直し・電子署名の活用促進について:https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/imprint/i_index.html
その他関連機関
- 公的個人認証サービス ポータルサイト:https://www.jpki.go.jp/
- e-Gov電子申請 電子証明書のご案内:https://shinsei.e-gov.go.jp/contents/preparation/certificate
これらの公式資料は、電子署名と電子証明書の法的根拠や技術要件について、最新かつ正確な情報を提供しています。導入を検討される際の参考資料としてご活用ください。