今さら聞けない電子契約Vol.2 「契約のやり方に規則はありますか?」

広がりをみせる電子契約。昨今ではテレビやインターネット上で電子契約ツールの活用を呼び掛ける広告を頻繁に目にする。シリーズ「今さら聞けない電子契約」のVol.2は、契約と契約書の違いについて解説する。

証拠となる契約書
契約締結の方法に関する一般的な規則はありません。日本では、契約締結に関する原則を民法で以下のように定めています。

~~民法~~
第五百二十二条 契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。
2 契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。

マンションの賃貸契約や雇用契約のように個別の法律で(電子契約を含めた)書面交付が求められるケースはあります。ただ、一般的には電話でもメールでも良いし、対面の口頭でも契約は締結できます。

それでは、契約書はなぜ必要なのでしょうか。

契約が成立しているかどうかや契約内容が問題となるのは、契約の当事者間で紛争となったときです。裁判になった場合には、自己の主張を裏付ける証拠が必要になります。口頭で合意しただけの契約では、「言った」、「言わない」という水掛け論に陥ります。

裁判の時などに、契約が成立していることや、契約の内容について証拠として利用できるのが「契約書」の価値です。

証拠として認められる契約書とは
「契約」と「契約書」は違うものです。契約は当事者間の合意であり、契約書は契約の内容を表示する文書で、証拠となるものです。裁判で何が証拠になるのかを定めているのは、民事訴訟法です。証拠として文書が使えるかどうか、以下のように定めています。

~~民事訴訟法~~
第二百二十八条 文書は、その成立が真正であることを証明しなければならない。
2 文書は、その方式及び趣旨により公務員が職務上作成したものと認めるべきときは、真正に成立した公文書と推定する。
3 公文書の成立の真否について疑いがあるときは、裁判所は、職権で、当該官庁又は公署に照会をすることができる。
4 私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。
5 第二項及び第三項の規定は、外国の官庁又は公署の作成に係るものと認めるべき文書について準用する。

文書などに本人の意思が本当に反映されているかどうかは、実は難しい議論です。印刷された文書だけでは誰が作成したものかわかりません。

本人の意思によらない文書(誰が作成したかわからない文書⇒本人確認していない文書)をいくら厳格に保管したとしても契約書の有効性にはつながりません。契約書として有効に機能するためには(すなわち、裁判において契約書を証拠として利用するには)、文書が次の2点を満たしていることが必要となり、これを文書の「形式的証拠力」があるといいます。

①契約者本人による作成が確認できること
②改ざんされていないことが確認できること

契約者本人による作成の確認が、この民事訴訟法で「私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する」と規定されていますので、我が国では、契約書に署名又は押印することが一般的です。契約締結に一般的な規則はありませんが、契約書が証拠として使えるかどうかは、本人又はその代理人の署名又は押印にかかっているのです。

日本でなぜ、ハンコを押すのが一般的かお分かりいただけましたでしょうか。

 

 

※この記事は2023年3月22日に、ニッキンONLINEにリーテックスが寄稿したものです。

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